短編

□王子様
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私が働かせてもらっているロンロン牧場の牧場主娘マロンは乙女だ。前に話しをしたら、いつか王子様が私を迎えに来る、と言っていた。私はそれに、もしかしたら魔王が来るかも、と冗談を言って怒らせた。
今の世はガノンドロフという砂漠から来た者が、七年前にハイラルを滅ぼし、魔王として魔物を従え君臨する世。

私は元々、ロンロン牧場の近くの平原にあった民家から通っていたが、魔物が頻繁にうろつくようになった為、今は住み込みで働かせてもらっている。
それだけ危険な世の中になのだ。マロンみたいに夢見る暇は全然ないのだ。

そう思っていた。本当に。
だが、それは変わった。



「君、大丈夫?」

そう言ってこちらに来る青年。

数分前に牧場内に魔物達が入ってきた。それに真っ先に気がついた私は、大声で伝えて逃げようとしたのだが、気づいた時には前に骸骨に剣を持った魔物。ニタリと笑うと飛びかかってきた。マロンの悲痛な叫び声に最後を覚悟したが、魔物は空中でどこからか放たれた矢に刺さり受け身を取れず、馬小屋の壁に当たりし昇天。

矢が放たれた方を見ると、屋根の上にちょうど太陽を背にして弓矢を構えている青年。青年は屋根から飛び降り、私を後ろから襲おうとした別の魔物を、剣を素早く抜き圧倒的な強さで倒し、残りの魔物達を倒しにかかった。
私はただその姿を呆然と見ていた。いや、見とれていた。

そして、青年の言葉にいたる。


「ねぇ、大丈夫?」

もう一度尋ねてくる青年に首をブンブン縦にふる。それを見た青年は、眩しいぐらいの笑顔を見せた。
青年は着ている服は緑色であれだが、整った顔に金髪。そして青い瞳。さらには、どこかのおとぎ話に出てきそうな綺麗な剣にハイリアの盾。
王子様という言葉が相応しい青年に私は恋に落ちた。


私は、まだ眩しいぐらい笑顔を向ける青年が直視出来ず、顔を下に向けている。すると、青年は勘違いしたのか私の頬に手を添え、上を向かせ、顔を真っ直ぐに見てきた。近くにある綺麗な青年の顔に、私は顔を爆発するように顔を真っ赤にした。
不幸中の幸いなのか、爆発する寸前にマロンが青年を呼びながらこちらに来たため、青年に顔を見られずにすんだ。

二人は何か喋っていたが、私は意を決して未だに頬にある青年の手を握って大声で言った。


「わ、私の王子様になってくれませんか」


その日から、マロンは私をからかってくるようになった。




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