短編

□寝かせろ。
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ネロは目の前の赤い男を果てしなく殺したいと思った。
ことの始まりは、草木が眠る深夜に起こった。
この日、ネロは一日中フォルトゥナの悪魔を追いかけは始末し、また別の悪魔を追いかけは始末しの繰り返しだった。結局、家に帰ったのは月が真上に昇る手前。
とにかく、ひどく疲れていた。愛しいキリエがわざわざ家まで来て、置いていった手料理のご飯を食べるのも、汗と土だらけの体をシャワーで綺麗にするのもどうでもよかった。ただ、ベッドで寝たかった。ネロの頭の中にはそれしかなかった。
背中に背負った剣と改造銃を通ったソファーの上に投げ、着ているコートを脱ぐのを忘れ寝室に入った。すかさずベッドにダイブ。すぐに、まどろみ始めるネロ。
すぐ近くからけたたましくドアが開く音が聞こえたが、ネロには遥か遠くから聞こえた。いや、幻聴として聞こえていたかもしれない。
「坊や、起きろ」
よく知った声が聞こえた。ダンテだ。しかし、どうでもよかった。
「坊や、起きろ。」
その言葉を二回、三回、四回、と聞くたび頭が覚めた。それと同時にイライラし始めた。
「坊や、起きろ」
何回目は分からない。
ただ、ブツリとネロの中でキレた。
「いい加減にしろよおっさん!!」
身を軽くお越し、近所迷惑も考えずに自分が出せる大声で怒鳴った。
「今、何時だと思ってんだクソやろう!!こっちはな今日一日中休む暇なく悪魔を狩っては走ってのなぁ繰り返しで疲れんだぁ!年中暇なあんたとは違って、ついさっき帰ってきたばっかなんだ寝かせろ!!」
息づく暇なく言った。疲れもあり、言い終わってから肩を大きくうごかしてネロは呼吸した。
なぜ目の前の男がここにいるのか。そんなことはもうどうでもよかった。寝かせろ。それだけだった。
ダンテは、ネロのその姿を見るとにんまり笑った。そして、一言。
「この頃寝れないから相手しろ」
銃声が鳴り響いた。
オーケー、おっさん。バスターで寝かしてやるよ。



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