短編
□カエルの歌
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わたしは、にんげんのオスに、こいをした。
かれは、ゾーラの里へと続く、このみちにある、カエルがあつまってがっしょうする大木で、オカリナをふいていて、カエルたちとがっしょうしていた。
わたしは、その姿とかれがかなでるオカリナに、ほれた。
ほんとうは、かれといっしょに、がっしょうしたかった。けど、わたしは、大木にいるカエルみたいに、きれいな鳴き声をだせない。そして、大木にいるカエルたちは、わたしに場所をゆずっては、くれない。
わたしは、泣いた。
カエルに、生まれたことを。
鳴き声が、みにくいことを。
わたしは、恨んだ。
大木にいるカエルたちを。
かみさまを。
それからして、風のうわさで、かれのことを、きいた。
かれは、たいへんな苦労をして、魔物とたたかっていると。
わたしは、また泣いた。
なにもできないことを。
わたしは、恨んだ。
カエルに、うまれてきたことを。
だから、わたしは、歌をうたいはじめた。
金の色の髪のかれを、おもいながら。
まわりから、みにくいと言われようが、うたった。
それからだ。じょしょに体が大きくなったのは。
それも、大木にいるカエルたちよりも大きくなった。
そして、人々からバケモノカエルとよばれた。
ひどくみにくい鳴き声でうたう、バケモノカエルとして有名になった。
そして、冬眠して、おきてを繰り返したある日。
かれとふたたび会えた。
いや、かれにとったらはじめてだろう。
かれは、にんげんのおとなになっていた。
かれのかなでるオカリナは、かわらずきれいだった。
その音色に、さそわれて出たわたし。
かれは、戸惑うことなくわたしを殺した。
「それって、お姉さんが昔から見る夢のお話?」
そう言う、目の前の少年は言った。
あの時と変わらず、緑の服に金色の髪。変わっていると言えば、オカリナの変わりにタクトを持っていること。
「それをどこで聞いたの?」
「タウラ島のみんなが言っていたよ。歌姫が歌うのは、昔から見る不思議な夢が一番の理由だ、って言っていたよ」
わたしは笑いながら、かがんで少年と同じ目線になった。
照れくさいのか、視線を泳がす少年。
「全部本当にあった話だよ。わたしの前世の話」
そう言って立ち上がる。
少年は、何か言いたそうだったが、テトラの声によって言うタイミングを逃した。
「なに、もたもたしてるんだ!みんな、待ちくたびれちゃてるよ!さっさと、出てきな!!」
「はーい。今、いくよ」
そう言って少年を見た。
少年は顔を反らしたて、弱々しい声で言った。
「…ごめんなさい」
わたしは、少年の手を握って言った。
「君だから、いっしょに合唱したいんだよ。リンク」
そして、わたしは歌った。
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