将軍記

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あぁ、今すぐに部屋にある紙を全てを燃やしたい。
女がそう思うのは何度目だろうか。
女は砂漠の民ゲルド族の人間。ゲルド族では不思議と女しか生まれず男は百年に一度だけ生まれ、その男はゲルド族の王になる。その王であるガノンドロフは、七年前にハイラル王にクーデター。神々の力であるトライフォースの一つを手に入れ魔王として君臨。
彼女は、その魔王の軍勢の将軍。女でまだ若いが、魔将軍と呼ばれるほど周りから恐れられている。



そんな将軍が四六時中頭を悩ませることがあった。書類整理などの事務仕事だ。
魔王の根城であるガノン城にいる人間は指で数える程度。その中の同族であるツインローバは故郷の砂漠で何かをしていて、たまに様子見で城に帰ってくる程度。
部下は魔物。知能がない。
結果的に自分以外する者がいない。
別に事務仕事は嫌いではない。量が問題なのだ。書類の紙が床から天井まで積み重なった紙のタワーが3つ。元々は5つあったタワーを将軍は、ろくに寝ず1週間で減らした。


「もう嫌だ!!なんで、そこにいるスタルフォスは読み書きをできないんだ!!」


ペンを机に叩きつけ、いつもの様に癇癪を起こす将軍。
控えていたスタルフォス三体は
「そう言われてもなぁ」
「オレたち魔物だし」
「ムリだよな」
八つ当たりされないように部屋の隅で、ひそひそ話していた。


「そうだ!!死ねば、この苦しみから逃れる!」


とんでもない事を言って、ステンドグラスの窓を割って身を乗り出して飛び降りようとする将軍。対して、スタルフォス三体は必死に将軍の服や体を掴み止めさせようとした。


「やめろ!セクハラ!!」
「セクハラって、この状況で言うんですか!?」
「離せ!!」


お互いに譲らない状況が続き、お互いに疲弊したころ、別のスタルフォスがけたたましい音をたててやってきた。


「将軍!!大変です!!今、廃墟とかした城下町で人間のオスが一匹で『俺の7年の青春をかえせー!!』と言いながら暴れております!どうしましょう?!」


言い終わるか否か、スタルフォスの脳天に湾曲刀が刺さっていた。
スタルフォス達は将軍を見た。
いつも腰にさしている剣が、鞘しかなかった。


「うるさい!こちとら飲まず食わず寝ずに書類を処理してんだ!自分達でなんとか解決しろ!」


そう言うと将軍は何事もなかったかのように椅子に座り、冷えきった紅茶を飲んだ。


哀れスタルフォス、いや骸と呼ぶべきか。




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