秋組
□寝る子は育つ?
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バタバタバタッ…
ああ…今日もまた騒がしいのが来た…
俺の安眠はこれで終わりか。
ガラッ
「琥太郎センセーーッ!!!」
直獅が騒々しく入ってくる。走り回ってる気配。息をひそめてれば、バレない…か?
と思ったら、すぐにカーテンを開けられる。
「やっぱりセンセ、ここにいた!」
無理か、と大きく欠伸をする。
「直獅、うるさいぞ。せっかく寝ついたんだ。ゆっくり寝かせてくれ」
そこで、てっきりいつも通り、「琥太郎センセー、寝てばっかだとつまんないんだぞ、ほら起きた起きた」……とか言われると思ったのに。
「悪い悪い。もう起こさないからさ。俺もこっちのベッドで寝かせてもらっていいか?」
「…………………………は?」
「だから、こっちのベッドで」
「じゃなくて」
今、何か変な言葉が聞こえたような。
気のせいか?
「あー、直獅、具合でも悪いのか?」
「いや、至って元気!」
「だよな。じゃあ、天変地異の前触れか?」
「どういう意味だよ!」
「直獅…今は真っ昼間だぞ。それを寝たいだなんて、どう考えてもおかしいとしか思えん」
「しょっちゅう寝てる琥太郎センセーには言われたくないぞ!」
…ああ、まぁ、それもそうか。
俺は、欠伸をしながら、「じゃあ、どういう風の吹き回しなんだ?」と一応きいてみる。
それがなそれがな、と直獅は嬉しそうに説明を始める。よっぽど嬉しかったのだろう、その調子たるや歌い出しかねない様子だ。
「聞いた話なんだけどな!寝てる間に背って伸びるそうなんだ」
「そうだな。寝てる時は間接が伸びてるというから。朝身長を計ると伸びてるってのがいい例だ」
「で、起きると重力がかかるから、また縮む。そこで俺は考えた」「何だ?」
…俺は嫌な予感しかしない。
「これからは寝て過ごそうって思ってさ」
やっぱり。
俺は大きくため息をついて、友人に酷な現実を教えようと試みた。
「いいか、直獅。そんなことをしてもお前の身長が低いのは変わらないんだ。いい加減、現実をみろ」
しかし直獅は更に目を輝かせ、
「違うよ、琥太郎センセ!男は諦めたら何もかもが終わり。ここからが勝負なんだ。…ってことで、おやすみ!」
そして、俺の隣のベッドに入ると布団にくるまって、寝息をたて始めた。
どうして、コイツは無駄に前向きなんだ。
というか、直獅にそんな情報を教えたの…誰だ。
答え、郁。
身長のくだりは、事実らしいです。義兄に聞いて、この話を思い付きました。