モノクロ写真

□猫になりました
2ページ/4ページ

「こんなファンタジーな事起きるんだねー。」

「にゃー…」

いきなり私は猫になってしまいまどかちゃんに抱えられている。

「どうしようか雪音?」

「にゃー…」

そんな事言われても…

学校から一人で歩いて…しかも猫の姿で帰れる自信なんてない。

鞄だって運べないし…

「雪音をうちで引き取りたいのはやまやまなんだけど、うちのマンションペット禁止なんだよ。」

「にゃー…」

そんな…いざとなったらぬいぐるみのフリするから頼むよ。

と、必死にジェスチャーしても通じなかった。

ダメか。

「…って、事で!!引き取り先を考えました!!」

「に?」

連れてこられた場所は…

「にゃー!!にゃー!!」

何でテニス部の部室!?

ちょっとまさか!!

幸村君に頼もう!!

「にゃにゃー!!」

嫌だー!!絶対に嫌!!

必死に抜け出そうとしてもまどかちゃんの腕から抜けられずに部室の中に入ってしまった。

「失礼しまーす!!」

「高橋!!部外者が何故入ってきている!?」

「ちょっと緊急事態で…あ!!」

真田君に怒られてまどかちゃんの腕の力が緩んだ隙に私は抜け出した。

だが部室のドアは閉められてしまった。

…どうしようどうしよう。

パニックになってとりあえず捕まらないために懸命に走った。

みんなの足元をジグザグに走り、どこかの棚に飛び乗った。

「我が立海のトロフィーに触るな!!」

びくぅっ!!

急に大声を出されて思わず体が反応する。

あ…確かによく見れば私の乗った棚には沢山のトロフィーやたてが飾ってあった。

これは悪い事をしたね。

真田君も怒るわけだ。

早く降りないと。

そう思って飛び降りようとしたが、後ろから抱きかかえられてしまった。

捕まった!!誰だ!?

「困った子猫ちゃんだね。ダメだよ走り回ったりしたら。」

幸村君ー!?

よりによって一番捕まりたくなかった人に捕まったー!!

「幸村君ナイス!!」

ナイスじゃないよ!!

「あんまり暴れると五感奪っちゃうよ?

怖い…猫相手にも容赦ないのか…。

初めて黒いオーラを直に向けられて恐怖で竦んでしまった。

「あ、幸村君たんま!!乱暴はしないで!!」

「躾のなってない猫にはお仕置きだよ。」

お仕置きやだー!!

「それ雪音だから!!」

はぁ!?

幸村君だけでなく他のレギュラーもみんな意味が分からないような顔をして私を見ていた。

「この猫が…水谷さん?」

「…にゃうん。」

とりあえず頷く。

「高橋。ついに妄想と現実の区別がつかなくなったのか?

「違う違う!!柳君が信じたくない気持ちは分かるけど本当なんだって!」

「…まぁ確かに女の子だね。」

ギャー!!幸村君ちょっと止めてー!!

猫の姿だけどプラーンと抱えられてあれを見られるのは凄い恥ずかしい!!

「証拠はあるんか?」

「証拠?んー…あ、そうだ。」

まどかちゃんが何か閃いた顔をして鞄から何か取り出した。

「じゃじゃーん!!」

そう言って出したのは50音が書かれてる紙。

「これを使って雪音と会話してみよう。」

そう言って机の上に置いた。

幸村君が私を机の上に乗せた。

「おい…つーかこの紙…」

こっくりさんやる時に使う奴じゃね?」

…確かになんか鳥居マークがある。

「何でそのようなものを持っていらっしゃったのですか?」

「まぁ細かい事は気にしないで。」

えぇー…大丈夫なのこれ?

呪われたりしないよね?

「さぁ雪音!!あんたが正真正銘の水谷雪音だって証明するんだ!!

まず第一問!此処はテニス部の部室である!?」

…何その問題…。

とりあえず、50音とは別に「はい」「いいえ」があったので「はい」に手を置いた。

「ほら!!雪音でしょ!?」

「そんなまぐれかもしれねーだろぃ。」

「そうっスよ!!もっと水谷先輩だって分かる事聞かないと!!

じゃあ第二問っス!!水谷先輩は部長の事好きっスか?」

「何聞いてんの赤也?」

「えー、いいじゃないっスかこれで先輩の気持ちがギャー!!

切原君は幸村君に成敗されていた。

え?私は何したって?

勿論「いいえ」をバシバシ叩いてたけど。

みんなの私を見る目が変わってきた。

どうやら信じてくれるらしい。

「二択以外にしてみんか?」

「そうだな。俺からの問題だ。徒然草の作者である吉田兼好の俗名は?」

どんな問題…。

柳君らしいって言っちゃ柳君らしいけど…

手を動かして50音に一つ一つタッチする。

うらべのかねよし

「すげーこの猫!!頭いいんだな!!」

「そうじゃなくてこの猫は水谷なんだろう。」

丸井君。別に頭いい猫って訳じゃないから頭の中は人間だから。

ただ国語が得意なだけ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ