Book童話のおはなし

□人魚のデートのおはなし
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深い深い太陽の光も届かない暗い暗い海の底。

深海に似合わない暖かい明かりがガラスから零れる魔法使いの家からは、ぎゃいぎゃいと騒ぐ声が響いて魚達を驚かせていました。


「いい加減に離せジェーリア!何を考えているんだ馬鹿者!」

「ダメだダメだダメだ!今日はお家にいなさいいい子だから!」

「人を子供扱いするなと何度いったら理解して頂けるのか私には解りかねますな!」

「まあまあまあいいじゃないか今日くらい家に居てくれほら紅茶入れるから!」

「だから約束があると何度言ったら「ああぁ〜!!聞こえない聞こえない!!」


カジストリはジェーリアに掴まれている尾ビレを振り払い、思いっ切りジェーリアの顔に打ち付けました。

「ぎゃっ!いたいじゃないかカジストリ!親に向かってなんて態度だい!」

「黙れ」

「酷い!酷いよカジストリなんでそんな冷たいんだああ小さい頃はあんなに可愛かったのにやっぱり甘やかし過ぎたんだろうかだって人魚はすぐに寿命が来てしまうしカジストリはガリガリに痩せていたし」

「………」

「無視しないでくれ!そして行かないでくれカジストリ!!」

カジストリは育て親を虫を見るかのような冷たい眼で睨みました。

「…だから何故、そう引き止めるかを言うのならこちらも考えて差し上げるのですがね。」

ジェーリアはぐっと喉を詰まらせ目線をさ迷わせましたが、カジストリの冷たい視線に負け重い口を開きました。


「…だってデートなんだろう!?」

「ハア!?」

「ダメだダメだ!カジストリは俺の子だまだ嫁になんてフギャッ!!」

もう一度、今度は全力で打ち付けた尾ビレにジェーリアは吹っ飛び、魔法薬の瓶の中に頭から突っ込んでいきました。

「このぼけ年寄りが自慢の薬でも飲んで眼を覚ましていろ!!」

ドアを開き、上へ上へと泳ぐカジストリはここが深海だと言う事に感謝しました。

なにせ燃えるように顔が熱いのです。

光が届くようになるまでに収まればいいのですが。





 
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