Book童話のおはなし
□白雪姫のおはなし
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とある国に美しい王がいました。
美しい王は正しい治世を行い、民衆からも臣下からも慕われていました。
しかし、王は同じくらい恐れられていました。
王は正しくも冷酷であり、潔癖なまでに勤勉でした。
そんな王様をみんな尊敬していましたが、王様を愛する人は、たったひとりしかいませんでした。
王様を愛する人、それは王様の義理の息子、痩せっぽち白雪です。
白雪は痩せっぽちの小さな少年でした。
黒炭のように黒い髪、雪のように白い肌、血のように紅い唇。
女の子なら美しくもあったでしょう。
しかし、白雪は少年でした。
痩せっぽちで小さな体の地味な面差しの少年は、とても頼りなく弱々しそうに見えました。
ですから母である前女王が倒れた際、白雪に王位を継がせまいと今の王様が女王の夫となったのです。
口さがない者は権力争いの敗者だの、王への不穏分子だのと言っておりますが、白雪は一度だって王様を恨んだ事はありません。
前女王が死の床についた時、女王は女王ではなく、白雪の母でした。
母を女王としてではなく、母として、ひとりの女性として眠らせてくれた王様に感謝すれど、恨む事はありません。
むしろ白雪は王様を愛していました。
きっと優しい方だと思っていました。
たとえどんな扱いを受けても。