読み物《短編》

□走馬灯
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――真夜中の病院の一室にグレルは来ていた。静まり返った病室にコツコツとヒールの音を響かせ対象者の元へと近づく。
ベッドに横たわる姿は衰弱し、後は死を待つだけだった。
ふと、閉じていた目が開かれグレルの姿を捉える。



「ぁ……貴方は……天使様……ようやくお迎えが来たんですね……」



「あらアンタ、アタシが見えるの?たまにいるのよね、死ぬ間際アタシ達(死神)の姿が見えるヤツ。まぁ、いいわ。アンタはもうすぐDEATH★です!」



「……はい……この世に未練はありません……幸せな人生でした……ただ、孫や家族の成長を見れないのが心残りですけどね……孫は……あのコは……画家になるのが夢なんですよ……」



彼女には12歳になる孫がいるらしく、コンクールでいくつも賞をもらい、将来は画家になるといつも言っていたそうだ。
そして自分を迎えてくれる暖かく優しい家族に囲まれて幸せだった。と懐かしそうに話した。



(そんなに愛されていたのに病室に誰一人来てないなんて……薄情ね。まぁ、所詮人間なんてそんなもんョ。)
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