読み物《短編》
□空回り
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彼もそれを分かってくれていると勝手に思ってしまっていたんだよ。
彼はずっと小生に話しかけていたけど、小生は適当に返事をしていたみたいでねぇ……。
パタンという音で我に返り振り向いたんだけど、もう彼が出て行った後でね。
それで今に至る訳さ。
これは正に【妻に逃げられた夫の様】じゃないかい?……いやいや、これは笑えないねぇ。
お客さんを縫合する手を速めながら、先程のやり取りを思い出す。
あのコの疲れた顔なんて始めて見たよ……。よっぽど我慢して頑張っていたんだねぇ。
……迎えに行こうか……――