読み物《短編》
□紅茶と君
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「葬儀屋。邪魔するわョ。」
勢いよくドアを開けて君が入って来たよ。毎回毎回ドアを壊さんばかりに入って来るのは君くらいなものだよ。この店を訪れるお客さんは大抵肩を落とし、物静かなものさ。現に君は何度も壊してくれたしねぇ。
「いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思っていたよ、グレル。」
座っていたカウンターの椅子から立ち上がり彼に歩み寄るとその赤い髪に手を伸ばした。良く手入れされた自慢の髪はさらさらと指の間をすり抜ける。小生のお気に入りさ。髪だけじゃない。この美しい髪の持ち主の彼の事もね。
「全く!ウィルの奴ってばホントに人使い荒いんだから!よこす仕事みんな雑用ばっかで頭に来るわ!」
ん〜?今日の彼はご機嫌斜めのようだねぇ。
「グレル」
少し低めの声で呼んでやれば驚いた顔でこちらを向く。「お食べ」とその口元にクッキーを持っていけばパクリと頬張る君。
眉間にシワを寄せたままモゴモゴとクッキーを咀嚼する。
「ヒッヒッ……怒った君はいつもにも増して色気があるねぇ。」
赤い髪を一掴みしそのまま口付れば君は頬を赤くしてそっぽを向いてしまった。