読み物《短編》
□悪夢の真実
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――あぁ、またこの夢――
デスサイズを構えるアタシの呼吸は乱れ、身体はあちこち傷だらけ。立っているのもやっとなアタシの目の前にはこちらを睨み付け真っ赤な口を開けた悪魔。
アタシは腕も足も石になったみたいに動かない。瞼も重く徐々に閉じていく。その間も悪魔はじりじりと距離を縮めてくる。
悪魔は腕を振り上げた。月明かりに照らされ鋭い爪がギラリと光って――。
ハッと目を開けると、勢いよく体を起こし辺りを見回した。(葬儀屋の部屋……ベッド……)
心臓は煩いくらい早鐘を打ち、嫌な汗が額と背中を伝う感触。身体は小刻みに震えていた。
(……またあの夢……)
「大丈夫かい?」
「あっ……ごめんなさい。起こしちゃったかしら?」
隣で眠っていた筈の葬儀屋から声を掛けられ申し訳なさそうに返事をする。
「珍しくうなされていたよ。怖い夢でも見たのかい?」
再び横になると葬儀屋はグレルの頭を優しく撫でた。
「えぇ……たまにね、昔の頃の事を夢に見るの。最近はいつも同じ夢。あれは……アタシが派遣員として独り立ちしてすぐの頃だったかしら……」