読み物《短編》

□貴方と二人で…【後】
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すっかり夜も更けた英国の街。そこにひっそりと佇む“Under Taker”の看板を掲げた店の前に一つの影が降り立った。
死神グレル・サトクリフ。しかし、一向に中に入ろうとせずため息をついていた。



それと言うのも、今日のグレルは頭のてっぺんから爪先までいつもとは対照的なまでの雰囲気を纏っていた。



そう、少し前グレルは執事としてあるお屋敷にいた事があった。それがこの姿。自らを女優と称するグレルが人間に扮した姿なのだ。



どうやら、前回のデートの際に葬儀屋が提案した《お願い》というのがコレらしく、真っ赤な髪は黒く後ろで一つに縛り、トレードマークの赤縁眼鏡は地味な縁なし丸眼鏡。しかも素っぴん、コートも羽織っておらず、どこかおどおどした表情を浮かべ、いつものグレルらしさなど微塵も感じられなかった。



本来ならメイクをせず、葬儀屋の所へ来るなどレディーとしてあり得ない事だ。
いくら女優と自負していても正直ノーメイクでは舞台に上がりたくはない。


故に彼は既に逃げ出したい気持ちだった。
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