君と死ねる明日

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 カコだけが肩の力を抜く中、場の空気は最悪である。

 リング戦直前にボンゴレリングを運んだバジルと、それを追ったスクアーロ。バジルを完膚なきまでに打ち倒したスクアーロとフェイクでスクアーロを欺いたバジル。実際の所フェイクを仕込んだのはバジルではないがこの際瑣事に過ぎない。

 そう簡単に消えるようなものならば因縁などではない。



「よぉ!久しぶりじゃねえかぁ。チェデフのガキがここで何をしている?」
「それはこちらの質問です。ここはボンゴレ本部の敷地内。確かにヴァリアーがこちらに来ると言う連絡はありましたが、ルートも移動手段もこちらで指定した筈。」
「襲撃されたんだよ。その、てめぇらに指定されたルートでなぁ!」
「…それが、我々の仕業だと言いたいのですか」
「そう考えんのが真っ当だろぉ?」



 お互い、相手に気を許すつもりも打ち解ける気も無い。当然戦闘することは許されないが、いつ本気の殺し合いが始まってもおかしくは無い。いつになく険しい表情を浮かべたバジルが言い募る。



「それに、ヴァリアーがこちらに来る目的は監視屋の護衛だったはず。護衛対象も連れずにこんな所に居るとなれば、こちらだってあなたの事を疑って当然でしょう」
「はぁ?てめぇの目は節穴かぁ?役に立たない目なら繰り抜いちまうことを勧めるぜぇ。監視屋ならここにいんだろぉ?」
「冗談は止めてください。ヴァリアーに派遣されたカコ殿とは以前別件でお会いしています。確かに年恰好は同じ位ですが、そこにいるのはヴァリアーの立てた偽物でしょう」



 きっと睨みつけたバジルと同じように、スクアーロもカコをかえりみる。勿論ヴァリアーが用意した偽物ではない、本物のカコだ。だが言われてみれば、彼女が『本物の』カコであると言う保証はどこにも無い。自室で出会ったあの時がスクアーロとカコの初対面だ。もし今目の前にいるこの女が監視屋のカコという人間ではなく、全くの別人だとしたら?ヴァリアーの内情を探るためのスパイだとしたら?

 二つの猜疑の視線に射抜かれて、流石のカコも苦笑した。



「もーう、ちょっと、やだなぁバジ君!あたしの事忘れたの?」
「その、バジ君というのは止めていただきたいと何度も……………え?!本当にカコ殿…ですか…?」
「って、ちゃんとスクアーロ言ったよねぇ?あーあ、スクアーロったら信用されてないのねー。まあ、だからこそ監視屋に依頼が来たんだろうけどさ?」



 あっはっは、本当ドンマイだな!声を上げて笑うカコを前にバジルは複雑な表情。スクアーロの方は、どうやら彼女が本物らしいと聞いてほっとするやらハラハラさせられたことが腹立たしいやら。



「しかし、カコ殿…その容姿は、如何なされた?本当に別人かと思ってしまいました」
「あはは、イメチェンってとこかな。ふふふ、これしきの変装を見破れないなんて、バジ君もまだまだ未熟だなあ」
「…返す言葉がありません」

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