Duty デューティ

□2話 セナ
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 やはりがたいのいい男はブルブルと震えていた。
喝を入れてやりたくなったが、私には到底できない。

赤いネクタイに黒いブレザーとズボンの男子高校生は、銀行強盗の男5人に向けてマシンガンを突き付けていた。
しかし彼自身にはナイフが向けられている。

さて、私はどうすればいいのだ?
このまま椅子の下に隠れていた方がいいのか?
…隠れていよう。

「オレさ、今すごいんだよね。静電気。」
 男子高校生は自分の髪の毛を触りながら言った。
彼の髪の毛は逆立っている。
それを見た瞬間、男たち5人はお互いの顔を見合わせた。
「高圧電線並みだよ。いいのかなぁ。君ら一気に停止だよぉ。」

 彼はフェイントをかけて男たちを驚かせ、笑い声を上げた。
「分かった。分かったから…」
「ぺっ!」

 交渉しようと一歩前に出た男の顔に、彼は噛んでいた黄緑色のガムを吐き飛ばした。
「うぇ!汚ねぇ!お前人間なら口に入れてるモノ吐き出すなよ!」
「口じゃないよ。胃にあったんだよ。そのガム。」
「具合悪いならとっとと帰れ!」
 
 彼は顔に付いたガムと格闘している男の頭を両手で押さえ込んだ。
すると青い火花を散らして男が倒れていった。
「さよならアンドロイド。」
「お…お前。」
「ごめん。時間ないんだよ。」

 そう言うと彼は残った4人の男たちの足をマシンガンで次々と撃った。
倒れた男たち4人の足からは、鮮やかな赤い液体が流れ出していた。
どうやら血ではないらしい。
血にしてはドロドロとし過ぎている。

「オ…オレらだって人間だ!」
「あんたらは人間じゃない。一緒にされちゃ困るね。」

 ニヤリと笑みを浮かべて、彼は男らに向かってマシンガンを乱射した。
状況を把握できない客や職員はただ悲鳴を上げている。
しかし私は彼のマシンガンを放つ横顔を、耳を塞ぎながら見つめていた。

なぜなら彼の瞳が私の方向へ向き、私をずっと見つめていたからだった。




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