Duty デューティ
□15話 届かない想い
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蝉の声がさらに大きくなる昼下がりだった。
私はただソファーで横になり、楽しかった4人の生活を思い出していた。
リョウとルナが生きていて、もし結婚できていたら…。
セナは私の傍にいてくれたのだろうか。
「理真ちゃんも早く結婚しないとダメだよ。」
そう言ったはずだ。
もう私の結婚なんてどうでもいい。
私は4人であの楽しい生活を続けたいだけだったのだ。
もう自然と溢れる涙を抑えようとは思わない。
私のことを見ている人などいないのだから。
突然玄関のドアが開いた。
そして深いため息の後に私の名前を呼ぶ声がした。
「理真ちゃん?」
「せ…セナ?」
勢いよくソファーから起き上がり、涙を拭いた。
そこにはポケットに手を入れたセナがいる。
セナは悲しそうな目をしたまま、ぽつりと私にこう言った。
「引っ越そう?」
「…え?」
どうしてそんなことを?
セナにとって、ここは思い出の場所なのではないのか?
…もしかしたら、その思い出がセナにとっては邪魔なのか?
…だから家に帰って来ないの?
引っ越せば、セナはちゃんと家にいてくれるようになるのだろうか。
私は唇を噛みしめて頷いた。
セナは口だけをニヤリと笑わせた。
目は何かを狙うように鋭い。
…私の知っているセナではなかった。