だって好きだから!

□♭17
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「リセットすると、どうなるの?」

オレは静かにキミに訪ねた。

「…」

何も答えないキミに微笑を浮かべてオレは言う。

「水島を忘れてオレのこと好きになる?」

「…神くんあのね。

…私、仮に付き合ってるとかやっぱり不自然だと思うの。

神くんだっておかしいって思ってるでしょ、本当は。

お互い惹かれ合えば自然とくっつくものじゃない?

だから…」

「だから?」

「…終わりにしよ…」

「契約は二ヶ月だったけど、途中で破棄するんだね」

「…」

「はっきり言って」

「…うん」

「そいうことなら…。ちょっとこっち来て」

オレはキミの肩を抱えて歩き出した。

「どこ行くの?」

「二人切りになれるとこ」

「?…今だって二人きりだったじゃない」

「ルールを破ったのは名前ちゃんだよ。

だからオレも破るね」

「…どういうこと?」

オレはピタリと足を止めた。

「今からキミを抱くんだよ」

名前ちゃんはオレの言葉を聞くと大きく目を見開いた。


オレはまたキミを抱いて歩き出す。

さっきよりもスピードを上げて。

行く先はロッカールーム。

「待って、待って…」

キミが途切れ途切れにそう言ったけれど、オレは聞こえない振りをした。





ロッカールームの扉を開けて明かりを点ける。

キミを先に入れて、オレは後ろ手に扉を閉めて鍵をかけた。

こないだみたいに慎重にそっとなんてしない、ガチャリって大きな音が立った。

「神くん…」

オレは息の上がっているキミの口を上から塞ぐようにキスをした。

さっきよりもずっと激しく吸い上げる。

唇を無理矢理開かせて口内に舌を入れた。

逃げる間も与えず舌を絡め取った。

口内を気の済むまで犯すと、唇の端に漏れ出た唾液を舐め取った。


そしてオレはゆっくりと唇を下へ移動させる。

顎、首筋、耳の裏、耳たぶ…。

舌を這わせ、なめ回し、吸い上げた。

キミが途中何度も身震いしたが、それがますますオレの理性を鈍らせた。

顔を上げキミの瞳を覗き込む。

目を見開いたままのキミが

「やめて…」

と言ったが、オレはうっとりとキミを見つめ、

「体、倒すよ」

と言った。


キミの体を抱き上げてそっと長イスに横たえる。

キミの体の傍にそっと跪き、Yシャツのボタンを上から一つ二つ三つと外していった。

三つ目まで外すと襟を大きく開き、露わになった肌をじっと見つめる。

そして吸い寄せられるように顔を近づけ鼻で大きく匂いを嗅いだ。

甘い匂いに誘われるように唇を這わせていく。

初めはそっとその艶めかしい肌を吸った。

徐々に理性のたがが外れ、啄む、舐め回す、吸うという動作を繰り返すたびに激しさと強さを増していった。


キミのそこがオレの唾液でぬらぬらと光り、もうすっかりキミの味がしなくなると、オレは顔を上げ、その下のボタンに手を掛けた。

「いや、いや、いやっ!

神くん、やめて。お願い…!」

体をやたらに強張らせ声を発することも出来なかったキミが、首を左右に振って震える声で言った。

喉から絞り出すような声だった。


キミの瞳を上から覗いてオレは言う。

「オレだって同じ気持ちだよ。

でも別れるんでしょ。

だったら仕方ないよ、選択したのは名前ちゃんだよ」

オレは何か邪魔された気がしてボタンにかけていた指をそこから外し、立ち上がって足下に回ると、キミの両膝の下に手を掛けてグイッと持ち上げ立たせた。

オレが膝に手をかけるとキミはギュッと膝を強く閉じて抵抗する。

「無理矢理は好きじゃないんだ。

足、開いてくれる」

オレはそう言ってキミの膝小僧を指先で撫でた。

名前ちゃんの膝はぴくりと反応し、目が見開かれる。


次の瞬間、両足を床に下ろしバッと跳ね起きる。

…ようやく気付いたんだ、さっきからずっと押さえつけてないってことに。

…逃げようと思えば逃げられるよ、今ならね。

起きあがって立ち上がって、そのまま扉に向かって走っていくと思ったら、ガシッとオレにしがみついてきた。

走って逃げても捕まえるつもりだったけど。


「怖い…」

オレのお腹にしがみついてそう言った。

「…逃げないと犯しちゃうよ」

オレはキミの髪を撫でながらそう言った。

「じゃあ、逃げる」

キミはそう呟いてオレから離れると、ふらりと立ち上がった。

「放すわけないでしょ」

オレはそんなキミを引き寄せて強く胸に抱きしめた。

そして、

「仮だっていい。こうしていたいんだよ」

キミの頭に頬をつけ、キミを包むように抱きしめ直した。

「私まだ引きずるよ。

神くんがどんなに思ってくれても私は違うところを見続けるよ」

オレの胸に側頭部を押しつけてキミはそう言った。

オレはふふっと笑って

「そのうちオレだけになるから。

今に身も心もオレのものになりたくなるよ、名前ちゃんは」

そう言った。

「もう怖いことしないで…」

「怖いこと?怖くなんてないよ。

素敵なことだよ。

甘く優しく抱いてあげるよ。

…理性の続く限りだけど」

「笑いながらそういうこと言うところが一番怖い」

「ふふ。オレだって名前ちゃんが他の男に心奪われてるなんて気分良いわけないけど、キミと愛し合う近未来を思うと笑いがこぼれちゃうんだ」

「…だから怖いってば」

「そんなオレも今に愛しくなるよ」

「…」

「オレの気持ちは変わらないよ」

「私も変わらなかったらどうするの?」

「変わるよ。

もう変わりかけてるのに自分で気付いてないだけだよ」

「そうなのかな…」

「そうだよ。じゃ、ちょっと座ってごらん」

オレは名前ちゃんを長イスに座らせると、胸のポケットに指を入れ、ある物を取り出した。

「いい。…この糸の先に付いた五円玉を見つめてて。

揺れるのに合わせて瞳を動かして。

顔は動かさないで瞳だけ…。

そう、そうだよ…上手だね。

だんだん眠くなってくるから…。

だんだん…。

だんだん…」

「スゥー…」

「え…、ちょっと!

本当に寝ちゃダメだってば!

起きて、起きて!」

本気で寝てる!?

「…。ク〜…」

「どんだけ深く眠ってんの!

犯しますよ、お嬢さん」

「ZZZ…」

あーあ。

久しぶりの二人の時間だったのに…。


オレはキミのYシャツのボタンを留め直した。

早く送り届けないと家の人が心配するし…。


取り敢えず親指を鳴らしてみる。

ぱちんっ。

…。

ぱちんっ!

…。

ぱちん、ぱちん、ぱちん、ぱちん!

………。

ばちん、ばちん…。

両手を合わせて叩いてみても全く起きない。

ま、まずい…起きなかったらどうなっちゃうんだっけ?

なんとかして起こさなきゃ!!


…ん、ちょっと待って。

こんなチャンス滅多にないし…。

つ、つついてみようかな…。

さ、触ってみようかな…。

め、捲ってみようかな…。


ジーーーッ、名前ちゃんの全身をくまなく見つめるオレ。


待て!

ちょっと待て!

そんなのイタズラ以外の何ものでもないって!

しっかりしろ、オレ!!


大きなため息を吐き、両手で頬を押さえる。


早く起きてよ、名前ちゃん。

オレが眠りに就かせたんだけどさ…。

…こうなったら、ベタだけどアレやってみよ。


ちょっとその前に…

「名前ちゃんはオレを好きになる。

名前ちゃんはオレを好きになる。

好きで好きで堪らなくなる」

…もうちょっと言っとこ。

「名前ちゃんはオレが好き。

名前ちゃんはオレが好きなんだよ、オレが好きなんだからね!」

…もう一声掛けとこ。

「名前ちゃんはオレとしたくなる。

オレとエッチがしたくなる、したくてしたくて堪らなくなる!」

そろそろいいかな、こんなもんで♪

…いや、一応もう一声。

「大好きだよ名前ちゃん。

愛し合おうね。…チュッ」

オレはキミの薄く開けられた唇にそっとキスを落とした。
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