だって好きだから!

□♭10
1ページ/3ページ

「ねえ帰りだけど、真っ直ぐ帰る?」

オレたちは再び弁当を食べ始めた。

オレは聞きたかったことを再度聞いた。

「うん。テスト前だしね。

神くんだって勉強するでしょ」

「じゃあ、明日は?」

「明日?」

「明日オレ、一日休みなの。

正確に言えば全体練習が休みで自主練はするんだけど。

だけど朝だけで後は何にもないから、昼前くらいから一緒に過ごしたいんだけど」

「じゃあ、学校の図書館で一日勉強する?」

そう来たか…。

一緒に勉強するのは賛成だけど場所がよろしくない。

色気のないトコ好きじゃないんだ、オレ。



「オレんち来ない?」

「!?」

「何にもしないから」

「…」

「オレんちが嫌ならラブホ」

「??」

「どっちか選んで♪」


「…良かったらウチに来る?」


えっ!?

すごい不意打ち。

名前ちゃんち…名前ちゃんの部屋にも行きたいけど…。

いろいろしづらいしなあ…。


「オレが行ったりしたらおうちの人びっくりしない?」

「大丈夫だと思うけど。

男の子が来ることにはなれてるから」

「え??」

「お兄ちゃんと弟がいるから男の子の出入りなんてしょっちゅうだもん」

そういうことか。

ちょっとびっくりしちゃったよ、オレ。

ちょっとだけね。


「でも、息子の友達と娘の彼氏じゃやっぱり違うよ」

「そうかなあ…?

彼って言っても仮だから、ほとんど友達みたいなものなのに?」

グサッ!

そんな言い方…。

なんとなく親しげにしてくれると思ったら友達になってきてたのか、オレ…。


これってやっぱりコミュニケーション不足だからだよね。

あんなことやこんなことができないからだよね。

付き合い始めてまだ丸一日しかたってないけどさ。

そういうカンケーがないと決めつけてるからだってオレは思うよね。


「仮だって彼氏だし、親に仮の彼氏ですって紹介しないでしょ。

やっぱりウチに来て。

いろんなこと勉強しよ。

いろいろ体験しよ。

友達じゃないことしよ!」

「すぐ変なこと言うんだからー。

勉強しかしないでしょ。

変なコトしたら即刻別れるからね」

うーん、半分以上本気なのに。

手厳しいな…

絶対に例の日が近いんだ!


「…分かったよ。

キス以上のことはしないよ、今は」

 
あちこちキスしちゃお♪


「じゃあ神くんちに行く」

「ほんと!?嬉しいよ♪

練習終わったら迎えに行くよ」

「…神くんちに行く前に買い物したいから、駅前で待ち合わせでいい?」

「いいよ!

そうだオレ、駅前にあるって言ってたあのケーキ屋さんに行きたいんだけど!」

「明日はドリンク無料の日じゃないよ」

「いい。行きたいんだ」

「じゃあ、そうしよ♪」

キミが嬉しそうに微笑んでいる。

甘いものが好きなんだね。

オレ今、一生こうしてたいってほどに楽しいよ。


好きだよ、名前ちゃん。

キミの笑顔が大好きなんだ。

いつまでもいつまでもその笑顔をオレに見つめさせてよ。

そして、その微笑みをいつかオレだけに向けて欲しいんだ。

その微笑みでうっとりとオレだけ見つめて欲しい。

今は叶わなくてもいつか絶対そうさせてみせるよ。

だから待ってて、オレは必ずそこへ行くから。

二ヶ月後には本当にキミはオレのものだから。





オレの部活開始の時間が近づいて、オレたちは一旦別れた。


別れ際にキスしようとすると

「さっきしたじゃない」

と名前ちゃんが言った。

「こんなところで恥ずかしいし」

とも言った。

「キスすると苦しいんだもん」

とまで言った。


「誰も見てないよ、誰もいないじゃない。

さっきはさっき、今は今。

苦しくしないから」

「でも…」

と言う名前ちゃんの両方の手首を掴んでキスをした。

しばらくするとキミが

「んん…!!」

と身をよじって悶えた。

オレは一旦唇を離し、

「呼吸止めないで、普通に鼻で息して」

そう言ってまたキスをした。

だんだん苦しそうなのがなくなって呼吸が穏やかになる。

それと同時に顎の関節が柔らかくなって、唇同士が吸い付くように合わさっていく。

両手をキミの手首から放し、頬を挟んで顔を上に向けさせる。


これで官能的なキスを二人で楽しめるね。


最後におでこにチュッてキスして、また後でねって別れた。



今日の帰りも一緒に帰れるし、明日の約束もできた!

テストが終わったらインターハイに向けて練習三昧だから、明日は大切にしたいな。

もうインターハイが終わるまでプライベートで会える日なんてないかもしれない。


夏休みになったら…


あ、夏期講座あるから七月中は毎日学校なんだっけ。

お盆過ぎも夏期講座だし。

私立だから夏休みも結構学校あるんだよね。

でも急に開放的になって遊びたいとか言い出すかもな〜。

オレのことなんて待たないで帰っちゃうかも…。

オレがインターハイでいない一週間に集中して遊んでもらうことにして…。

…森村に名前ちゃんのこと頼んでおくことにしよう。

開放的になりすぎないように注意しておかなきゃ。


オレがインターハイから帰ったら、二人でいろんなことしようね♪


夜の海とか、夜の公園とか、夜の暗がりとか、オレんちとか、オレんちとか、オレんちとか…。


ふふ♪

楽しみだな〜♪

それだけで練習もインターハイも頑張れちゃうよ♪


部室に向かうオレの足取りは、思わずスキップでもし出すんじゃないかってくらいに軽かった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ