だって好きだから!

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決勝リーグが終わった。

オレたち海南大附属高校男子バスケットボール部は全勝で県優勝を果たし、インターハイ出場を決めた。

オレはベスト5に選ばれ得点王にも輝いた(自分で言っちゃった)。

正直びっくりだけど…

だってオレ、湘北戦では途中ベンチだったから…

武里戦も最後はベンチだったし、

けど、オレのこの一年間の努力が報われたこと、チームの役に立てたことが何より嬉しい。

インターハイでもチームのために持てる限りの力を尽くすつもりだよ。




翌月曜日の朝、一限を潰して全校集会が急遽執り行われることになった。

表彰式&全国大会へ向けての壮行会。

学校としては予定通りかな。

オレ、かなり目立っちゃったな♪

名前ちゃんの目にもオレの姿を焼きつけられたかな。

MVPの牧さんには負けるけど、オレだってかなりのもんでしょ。


今朝は朝練後、そのまま集会に出たからまだ名前ちゃんに会ってない。

頑張ったオレになんて言ってくれる?

キミに会いたい、一秒でも早く会いたい!


先週一週間、学校生活は普通に送ってたけど、寝ても覚めてもバスケ一色の日々。

そんな精神状態。

名前ちゃんのことは大好きだけど、あれやこれやと考えて一喜一憂してられない状況だった。

朝の5分間のおしゃべりに全力で挑んで後はバスケに集中。

じゃなきゃ海南のバスケ部員はやってられないんだ。

でも今日からまたしばらくキミのことをいろいろと考えられる。

切なくも愛しい日々、再び!

なんちゃってね。


集会の後、校長から直々にバスケ部(監督とベンチ入り部員)に労いのお言葉というのをもらって、教室にはみんなより少し遅れて戻った。

廊下を歩いていると他の教室から黄色やダミ声の声援が上がる。

小菅と少しずつ返しながら先を急ぐ。

教室に入ると小菅と二人、一層厚い歓迎を受けた。

入り口から入ってすぐのところで入れ替わり立ち替わり声を掛けられた。

すごく嬉しいんだけど、感謝感激なんだけど…。

結局自分の席、名前ちゃんのところには次の授業の担当教師が教室に入ってくるまで戻れなかった。

オレが席に着いたとき、名前ちゃんが

「おめでとう、神くん」

って一言だけくれて

「ありがとう」

って小声で返したところで授業が始まってしまった。



さい先悪いなって思ってたら…

あ、みんなが応援してくれるのは本当に感謝してるんだよ。

バスケ部員としても個人としても本当にありがたく思ってるんだよ。

単に名前ちゃんとの関係がオレが思ってたようにいかなかったってだけなんだけど。

そう思ってたら次の休み時間に、

三上というこのクラス内じゃ結構イケてる男子が名前ちゃんに近づいてきた。

滝田の次は三上かよって、朝の時間に片づけられなかった教科書やらノートやらを片付けながら思っていたら、

「こないだ言ってた店なんだけど、月曜がその日らしくって、良かったら今日どう?」

って、それって誘い?みたいな会話がオレのダンボにした耳に飛び込んできた。

しかも、

「うん、いいよ!」

って軽く受けてる。

「じゃあ放課後!」

「うん、楽しみにしてるね!」

三上が軽く手を上げて去り、名前ちゃんも手を振った。


「どこ行くの?」

オレはすかさず聞いた。

「駅前にできた新しいケーキ屋さん。

カップルで行くと飲み物無料なんだって。

月曜日だけね!」

「カップル??」

キミたち違うでしょ!

「うん、とにかく男女二人のペアで行けばいいみたいだよ」

「それで三上と行くんだ?」

「うん。こないだ一緒に帰ったときにすっごく暑くてね、

喉渇いたねってコーヒーショップ寄ったんだけど、その時に教えてくれたの」

「うんうん、それで?」

「行ってみた〜いって言ったら、じゃあ一緒に行こうかって言ってくれて。

曜日、調べておいてくれるって言ってくれて」

「それが今日なんだ」

「そう!おいしかったら神くんにも紹介するよ」

「一緒に行ってくれるの?」

「私で良ければいいけど!

でも姉妹とかお母さんでもいいんだよ。

神くんも甘いもの好き?」



…キミを野に放したのはやっぱり誤算だったかな、こんなことならどっかに監禁しておけば良かった。

ちょっとだけ本気でそんなことを思う。


三上。


浅尾&滝田とはさり気なさが段違いだな。

イケメンの部類に入ってくるとやっぱり違うんだね。

すでにプチデートは済ませてる上に、二度目は彼女にお付き合いか…。


くうっ!


でもオレにはバスケがあるんだっ。

一生懸命自分に言い聞かせる。


「神くん?」


名前ちゃんがオレの顔を覗き込んでいる。

「うん。考えたんだけどやっぱり母親とは行きたくないな…、気恥ずかしいし。

オレ、一緒に行くような子もいないし、名前ちゃん一緒に行ってよ」

オレは名前ちゃんの目をジッと見つめて言った。

「いいよ、神くん暇ある?」

ニコッとして言うけど何気に図星を突いてくる。

「定期テスト中とか夏休みとか、昼休みとか」

「ケーキ好きなんだね!」

ってクスって笑うキミが好き。
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