カルピスソーダ

□♯14
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「じゃ、じゃあ、藤真と名前ちゃんは親交を深めるためにも二人でホラ、ダブリューアイアイでもやれよ。あ、そうだ。その前に最初は取り敢えず何するかとかどこ行くとか決めろよ」

「そ、そうだな!そこまでしてくれないと、オレたち安心できないよ。映画でも海でも何でもいいから。…買い物にも付き合わせてやってよ。もう、明日からお願いしたいくらい」

「あ、オレ、ゲームをセットしてきます」

「卓ちゃん、ダブリューアイアイスポーツリゾートにして」

オレの周りでは目まぐるしく状況が変化していく。

花形が笑いを堪えながら次の提案をし、一志がそれに続ける、伊藤はオレたちのために動いて、名前ちゃんは唯一出来るゲームソフトの名を言った。

ほら、ほら!花形がオレに目で訴えてくる。

あ…、えーと、えーと…。

「どこか行きたいところとかある?」

「うーん…藤真くんは?」

そ、そりゃ………オレにそんなこと聞いたら…。


…どうしてこうオレってヤツはついつい後ろめたい思考回路になるんだよー!

やましすぎて顔が見れないっ。


「名前ちゃん、藤真は普段バスケしかしてないから…。この際、散歩でもいいんだ、藤真の渇ききった生活が少しでも潤えば。と言っても散歩に人を誘うのは難しいだろうから、取り敢えずは名前ちゃんがよく行くお店とか案内してやってくれないかな?」

「う、うん。藤真くんそれでいい?」

花形の提案に素直に従い、オレに確認を取る名前ちゃん。

もちろんだよ〜!

キミにぴったりのかわいい物を見て、ジュースを一緒に飲めればオレ大満足!

「うん、よろしくね」

オレは満面の笑みで返した。

「ほら、携帯…。交換しとけよ、その方がお互い便利だろ」

一志の進言で、オレたちはいそいそと携帯を出してデータを交換し合った。

感激すぎて涙があふれ出しそうだった。


花形、一志、伊藤(?)、ありがとう。


オレは心からそう思った。




その後、オレと名前ちゃんは無線通信のコントローラーを画面に向かって振って遊ぶゲームをして遊んだ。

名前ちゃんが唯一できるゲームソフトというそれは、バーチャル空間のリゾート地でスポーツをして楽しむというゲームだった。

オレんちにもあるけど、一時夢中で遊んだものの最近はゲームで遊ぶことなんてなかったから…。

「何やる?」

キミがそう聞いてきてくれて、オレが

「名前ちゃんの得意なのでいいよ」

と言ったのがいけなかったのか…。


卓球、めちゃくちゃ強いんですけど…!

生来負けず嫌いのオレは、もう一回、もう一回お願いします!と言って何度もキミに挑戦した。

けれど明らかに、ボールのスピード、回転、コース、勢い、何もかもが違っていた。

なんでそんなに強いんだよっ?

まさかこんなとこで本気になるとは…。

一ゲームで三点取るのがやっとだった。


その後、アーチェリーやゴルフもやったけど、やっぱりやたらにうまかった。

その強さは卓球ほどじゃなかったから、ちょっとほっとしたけど。


後で聞いたら、伊藤に負けたくない一心で伊藤のいない間にかなりの特訓をしていたらしい。

最初は何をやっても伊藤の方が強かったのに、今ではほぼ名前ちゃんが勝っているということだった。

「諸手を上げて喜ぶ姿を見て決心した」

と名前ちゃんは言っていた。

更に、

「私は勝ってもそんなことはしないの、じゃあ終わりにしよっか、って言うだけにしてるの」

と言った。

そう言ってイタズラに笑うキミにオレの心臓は鷲掴みにされた。

オレはもうときめきを隠しきれなかった。


キミといるだけで世界は色を変えていく。

無色透明のはずの空気がキラキラと輝いて、ふんわり優しいものに包まれてるような気持ちになった。

何もかもが楽しくて、自然と笑みがこぼれる。

こんなに気分がいいなんて…。

女の子といるってこんなに楽しいことだったのか?

オレにとって女の子と呼べる存在は名前ちゃんだけだ、そう気付く。

他は女子。


オレ、すごく楽しい♪

こんなこと初めてだ。



名前ちゃんが

「バスケットやってみて」

と言った。

そうそう、オレ、このゲームのバスケにはまったんだよ。

オレは、制限時間内にスリーポイントシュートを成功させた数を競うゲームをやった。


ざっとこんなもんかな!


「すごーい!すごーーい!!」

とオレの隣で大喜びする名前ちゃん。

オレは一仕事終えた満足感とキミを歓喜にうち震わせることに成功した自分自身とに、心から酔いしれた。


「もう一回やってみて!」

オレはそれから何度かやって見せたが、その度に名前ちゃんは

「藤真くんてすごいんだねー!」

とひたすらに感心した。


本物のバスケの方がもっと凄いんだけど♪


そう思いつつも、好きな子にキャーキャー言われることがこんなに気持ちのいいことだったなんてな。

キャーキャー言われ続けてきたオレの人生で、こんなに心がときめく黄色い声は初めてだった。

凄いって褒められることがこんなに嬉しくて、喜ばせるために全神経集中させて夢中になるなんて、オレ史上初の出来事だった。


分かってる。

名前ちゃんだからだ。

名前ちゃんじゃなきゃオレの心は動かないんだ。


キミの声聞きたさに、たかがゲームに汗までかいてるオレがいた。


お友達なんて絶対嫌だ、いつかキミと手を繋いで歩くんだ。

オレは心からそう願った。
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