カルピスソーダ

□♯6
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それからの二週間はテスト前やらテストやらであっという間に過ぎた。

オレの妄想は相変わらずだったが、なるべく寝る前に集中して妄想し、昼間は普通通りの生活を送るように心がけていた。

妄想って言ったってそんなイヤラシイことばかりじゃない。

名前ちゃんの姿を思い浮かべるとか、もし付き合ったら〜とか、もし結婚したら〜とか純粋系の妄想が主だから安心してくれ。


えっ!?


怪しくない!怪しくないって!!


…そりゃオレだって少しは…


って思うだけでしてないから!

出来ないから〜!

お願い信じて!!!




そんなんでテスト大丈夫なのかって?

それが今回は名前ちゃんも頑張ってるんだからオレも頑張る!って頑張った。

伊藤に勉強教えてやるんだってのでも燃えた。

なんだかんだでかなり頑張ったから、バスケの推薦なくても結構いい大学行けるんじゃないかって思ったくらいだ。


名前ちゃんの前でかっこいい藤真くんでいたい一心で、オレは何事も頑張って生活している。

彼女に相応しい男でいるために品行方正な藤真くんでいる。


まだ前にいないだろうって?

今から行くからちょっと待っててって。

あ、それからオレは元々品行方正なタイプだけど、更にそう心がけてるってことだ。

生徒会長にでも風紀委員長にでもいつでもなれちゃうくらいに気を遣っている。


たとえば?

女子は全員苗字にさん付けで呼ぶようにしたし、消しゴムのカスは床に落とさないで休み時間ごとにゴミ箱へ捨てている。

姿勢を正し、ポケットに手を突っ込むのも止めた。


いつか必ず名前ちゃんに会えるという確約がオレを落ち着かせ、毎日を前向きにしている。


そんなオレの気持ちが天に届いたのか伊藤に届いたのか、思いがけず早くに伊藤の家にお邪魔できる日が決まった。



テスト明けの練習初日、休憩時間に伊藤が自ら近づいてきて、

「藤真さん、今度の日曜の午後はどうですか?」

とオレに言ってきた。

一瞬なんのことか分からず

「どうした伊藤、なんかあったか?」

なんて怪訝な顔で返してしまい伊藤をびっくりさせてしまったが、

「問題ない。是非伺わせてもらう」

と花形が横から割り込んで、やっと事態が飲み込めた。

オレは急に緊張して

「あ…もちろん、もちろんだ…。お、おれはまちがえなくだいじょぶだ…」

しどろもどろに平仮名の多い日本語を発した。

「じゃあ、楽しみにしてます!」

目を輝かせてそれだけ言うと、伊藤は元いた仲間のところへ戻っていった。




「今度の日曜ってもうすぐじゃないかよ」

「明後日だな」

「気張れよ藤真」

「あ、ああ…」

「オレが一緒にいってやるから!」

「オ、オレも!」

「イヤ、オレが」

「オレが行かなきゃ始まらんだろう」

「「「「どうする、藤真!」」」」




結局オレは花形と一志と共に伊藤家へ行くことにした。

見た目だけの問題なら高野と永野を連れて行く方がオレが一層引き立つこと間違えないが、伊藤家全体の好感度を考えると、見た目・知性・品を兼ね備えた花形と一志が今回は向いていると判断したからだ。

オレは恐らくほとんど平常心ではいられないだろうからその助けになってくれると思えるのも花形と一志だし。

高野と永野は面白がったりして絶対に当てにならない。


「花形と一志に頼む」

オレは即座に四人に伝えた。

「やった!」

「やはりな」

「なんでだよ?」

「オレも伊藤の家に遊びに行きたいー!!」


「今回は伊藤がオレたちを招待する設定だろ。伊藤の雰囲気とか伊藤の意志とかを考えろ、明らかにおまえたちではないだろうが」

「ひ、ひどい!!」

「伊藤のせいにして、本当はおまえが花形と一志がいいんだろう?!」

「そんなことはない」

「嘘を付け!おまえの目が嘘だと言ってるぞっ!」

「バカを言うな、オレがおまえらを嫌がるはずないだろ」

「へえー。分かったぞ、藤真!
彼女持ちばかり連れてってライバルを一人でも減らそうって魂胆だな!」

「相変わらず汚ねぇな。おまえの恋路を邪魔するほどオレたち曲がっちゃいねえぞ!」

「何抜かしてんだよ!ライバル云々で言ったらおまえら連れてく方がよーーーっぽど無難だわ!鏡見やがれ!
そんなんだからおまえらを連れてくのは嫌なんだよ!
花形と一志の方がよっぽど気が利いてて物事分かってる!人をからかったりしないしな!!」

「「やっぱり!!」」

「…なんだよ、文句あんのかよ」


「ま、いがみ合いはそれくらいにするんだな。今回はオレと一志が藤真に付き添って行くから。
オレたちだってそうそう暇とは限らないし、今回だって本来なら別の用件を入れたいところだが、敢えてこっちを優先させている。
藤真は早いうちにオレたちの手を煩わせないで名前ちゃんに近づけるようにしろ。
いいな」

「…あぁ、頑張るよ…」


そう言ったものの実際自信はない。

二人っきりなんて考えただけでもクラクラする。

想像なんてしたら気絶しそうだ。


でも、少しでもキミに近づきたい!

キミに好きって伝えたい!!

そしてキミがオレを好きに…好きに…好……




「藤真!?」

「どうしたんだ!?」

「誰か氷!!」

「なんで鼻血!?」

「悪かった、もうからかわないから!鼻血よ止まれー!」
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