カルピスソーダ

□♯4
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「カルピスソーダって懐かしいよな!」

「確かに。カルピスなら家でも飲む機会あるけど、カルピスソーダって外で飲むものってイメージあるもんな」

「オレなんてカルピスソーダ見るの小学校以来かも。ファミレスのお子さまドリンク以来」

「ハハハ!ただのカルピスじゃないっていうか、炭酸の弾ける感じが大人な感じしなかったか」

そうそう、甘いものには変わらないのにな、なんて言ってオレの周りで笑いが起こる。

オレは包み紙をピッと千切りストローを引き出す。

気泡の上がる液面にスッと挿すと氷がカランと音を立てた。

右手にグラスを持ってストローの位置を口に合わせる。


「…飲みづらいだろ」

全員が取り囲むようにオレをジッと見つめていた。

「ああ、悪い…」

皆がそれぞれに目を逸らした。


改めて…。


細いストローを伝わせてスーッと吸い上げると、シュワッと舌に絡みつく二酸化炭素。

ゴクリと飲み込むと喉の奥で弾ける感覚が鼻から抜け脳をも刺激する。

最後にカルピスの甘さが口いっぱいに広がった。



「…」

コレだ、間違いない!

もう一度飲む。

「…」

やっぱりコレだよ〜!!!

もう一回。

もう一回。


「おいしい?」

名前ちゃんが目をくりっとさせて興味深そうにオレを見る。



「うん、おいしいよ!…飲む?」

オレはグラスを差し出した。

「え?!えっと…」

なんだか戸惑っている様子だ。

「遠慮しなくていいよ、ほら」

オレは満面の笑みで名前ちゃんの目の前にグラスを差し出す。

だってこの味をキミにも味わってもらいたい!

「あ、うん…」

名前ちゃんが自分のグラスからストローを引き抜き、オレの差し出したグラスに挿し込むとそのまま一口飲んだ。

「うん。おいしい」

名前ちゃんは満面の笑みをオレに返してくれたけど、オレは思いっきり固まった。

だってものすごい近いところに頭が…。

しかも押さえきれなかった髪がサラッとオレの腕に…。

つか、なによりスゲーいやらしくねえ、コレ?!


「ふ、藤真!おまえ!何させてんだよ、名前ちゃんに!」

永野がオレの首を締め上げる。

「お、おまえ、そんな顔でそんなこと言って女子のハートを鷲掴みにしてたんだなっ!」

声を震わす高野。

「大胆不敵だな」

と花形。

「なるほどね」

一志が頷く。

「藤真さんてやっぱりすごいな…」

伊藤まで。

「なんかおかしかった?おかしかった?」

これは名前ちゃん。

「ちょっと待て!オレは…」

そんなんじゃないんだ、オレは!!

「しかもさりげに間接キス狙ってなかったかあ?」

「さりげじゃない、もろに!だ」

「初めて見たよ、藤真の手口」

「結構、無節操なんですね」

「マネ出来んな」

相変わらず続くオレに対する口撃。

「なに?なに?何の話し?」

…名前ちゃん。


「待ってくれ、違うって言ってんだろ!!」

「「「「じゃぁ、なんなんだよ!」」」」

「だから!!…おいしいものを分けたかったんだよっ」

「「「「「ふーん」」」」」

「あ、うん、おいしかったよ、本当」

オレを見てほほえむ。

「名前ちゃん…」

キミのその言葉だけでオレはいい、キミはオレの天使だよ!!


「じゃ、オレたちにもそのおいしさ分けてくれよ」

永野がマジメな顔でオレに言った。

「あ、ほら。飲めよ」

オレがグラスを差し出そうとすると、

「マスター!カルピスソーダ六つね〜」

後ろを向いて大きな声でオーダーする高野。

「おいっ、何言って…」

オレが高野を制止しようとする傍らで

「ごちそうさま〜」

四人分の声が重なった。

「おまえらっ!」



「たまにはいいだろ、監督〜」

「オレも監督におごられた〜い」

「藤真さんすみません、オレたちまで…」

「…分かったよっ!」

「「「「「あざーっす!」」」」」



楽しい夜は更けていった。
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