カルピスソーダ
□♯1
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初恋って…
バカにすんなよ、オレだって!
シュート練習をしながら、休憩中のやりとりを思い出した。
………確かにオレには、気になってしょうがない女子とか、これが恋なんだと自覚したとかいった覚えがない。
振り返れば、幼稚園に上がったときにはすでにモテていた。
オレのことで女子同士で争いがおきたり、イジメもあった。
小六のとき、クラスで一番カワイイと男子の間で評判だった女子が、
オレの隣の席の女子を階段の踊り場で仲間数人と取り囲んで、
口汚く罵ってるのを目撃したときは、女子って信用ならないって思った。
クラス一カワイイと言われていたその女子を好きだったわけじゃない。
オレがどうこう思う前に、その子がオレを好きだった。
オレに近づくために、オレの隣の席の女子に親しげにしょっちゅう話しかけに来ていた。
その日もそうだった。
しばらく親しげに話した後、
「おトイレ行こう〜♪」
と、オレの隣の席の女子の腕を抱えて連れていった。
別に、後をつけたわけじゃないけど、それがキーワードになってオレもトイレに行っとこうと思った。
その帰りに目撃したってわけ。
そんなことしておきながら、次の休み時間にはまた猫なで声で近づいてくる。
変わったのは、隣の席の女子がオレと二度と口を利かなかったってこと。
恐ろしすぎると思わないか。
中学以降は、そのことを忘れたわけじゃないけど、女子全般に興味も湧いて、
好きって言ってくれるなら、イイって言ってくれるならってかんじで、
カワイイと思われる子たちと付き合ってきた。
でも結局、彼女たちの方から離れていった。
時に罵り、時に泣きじゃくり、時に冷淡に…。
要するにバスケばかりのオレが嫌なんだそうだ。
バスケごと愛してくれよ、なんて言うほど執着もなかったし、替わりはすぐ現れたし。
そんなこんなで、今日まで来ている。
…え?小六の時のクラス一カワイイ女子?
中学になってますますカワイくなったって、男子には大評判だったぜ。
…オレと?
中学に入って告白されたけど、丁重にお断りしたよ。
なんでってしつこく聞いてくるから
「おまえ、いじめっこじゃん」
て言ったら、顔真っ赤にして走ってった。
オレの中じゃ一番苦手なタイプだな。
スリーポイントシュートを打って、ボールがリングをくぐる。
ネットを揺らす心地いい音がする。
「カルピスか…」
気分に任せて独りごちた。
花形たちの言う通りかもしれない。
なんだかんだで、オレはあいつらが好きだ。
いつでもオレのこと、仲間のこと、真剣に考えてくれる。
三年間の絆、それ以上のものを感じる。
何でも話せてバカができる。
こんな居心地いい空間、他にあるかよ。
初恋の相手が見つかったら、真っ先にあいつらに言おう。
オレは楽しくなって、いつもの倍の練習量を部員に課した。
…ニヤつきながらシュート練習をする藤真の姿を花形たちスタメン四人が、いぶかしく見ていたことを藤真は知らない…