そのほか

□つかの間の休息
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「弥太郎殿?」

弥太朗に憑依したまま、ヴァレンティーノファミリーのアジト内をうろうろしていたら、背後から声を掛けられた。
俺はくるりと振り返る。

「ちわーす」
「おや、聡明殿の方でしたか」

そこに居たのは頭から袋かぶったおっさん…もといロレンツォ。
手にはお盆を持っていて、その上にはお茶と茶菓子がふたつずつ乗っかっていた。

ああ多分首領と食べるんだろなあ、しかし小腹減ったなあ、と思いながらぼんやりそれを見ていたら
ロレンツォはどうです、と呟いて

「一緒に食べませんか?」
「え、いいの?食う食うー!」

思わず腕を広げて喜びを表すと、
ロレンツォは少し肩を上げた。どうやら笑ったようだった。

「ん、どした?」
「いえ、いつも寡黙な弥太郎殿がはしゃいでる様子に見慣れないものですから」
「弥太郎はムッツリだからなー」
「はは、なんですかそれ」

揃って縁側に腰を下ろす。
快晴とは言えないまでも、外は晴れていた。

「んー」

お茶をすすって、俺はうなる様に声を出した。
いい天気の日に、ゆっくり縁側でお茶を飲む…

「なんかいいなぁ、こういうの」
「聡明殿、おじさんみたいですよ」
「いや実際おっさんだしなあ」
「おや、そうでした」

ロレンツォはまた笑ったようだ。


「…ん?」

そこに、どすどすとうるさい足音が聞こえた。
なんだなんだと二人して音のする方を見ると、なにやら怖い顔をしたなっちゃんがこちらに迫ってきていた。

「そ・う・め・い・さん!」
「なっちゃん、どうしたのそんな怖い顔してー」
「どうしたの、じゃ有りませんっ!勝手に弥太に入ってうろうろしないでくださいっス!」

さっきまで静かでのどかだった縁側に、なっちゃんの怒声が響く。

「…あーゴメンゴメン。暇だったからさー」
「しかもそのお菓子はなんスか!どうせロレンツォさんに頼んで出して来てもらったんでしょう!」

え、と俺とロレンツォは顔を見合わせる。

「夏輝殿、これは私が…」
「そーそー、これは…」
「ロレンツォさん、聡明さんを庇わなくていいっス!ほら行きますよっ遥さんが呼んでますから!」
「っぐえ」

人の話を聞く気がないなっちゃんに、俺は襟首を掴まれ引きずられる。
俺は説得することを諦めて溜め息をつき、だんだんと離れて行くロレンツォにひらひらと手を振った。


(じゃーまたー)
(はは、はい、また)
(あっコラ聡明さん!またそんな!)
(いててっ、なんだよーなっちゃーん)






<あとがき>
なっちゃんの扱いがあれだけどなっちゃん大好きです!アホの子かわいい。
毛探偵はいいおっさんがたくさん居て幸せだ。という話のつもり(?)

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