そのほか

□煙草とあの人
1ページ/2ページ

※博士が喫煙してるシーンがあります




カロスリーグでチャンピオンとなった私は、なにかと忙しい日々を送っていた。
チャンピオンとして名が広まったことで、どこへ行ってもトレーナーから声をかけられるようになり、再戦の申し込みが絶えなかった。
バトル以外にも、カルムやサナたちと遊びに行ったり、おしゃれを楽しんだり、大好きなポケモンたちと過ごしたりしながら
気が付けば、ミアレでのあの大規模なパレードから、3ヶ月が過ぎようとしていた。

そんな中ふらっと立ち寄ったミアレで、ポケモン研究所に訪れることにした私は
早速ホロキャスターでプラターヌ博士に約束を取り付けた。
博士に会うのも、ずいぶんと久しぶりのことだった。



「博士!」
「やー、セレナ!久しぶりだね」

約束の時間、研究所のエレベーターから博士の部屋に飛び込んだ私は、腕を広げて招き入れてくれた博士に思わず破顔した。

「お久しぶりです、博士!」
「セレナ。しばらく会わないうちに、なんだか大人っぽくなったんじゃない?」
「そんな・・・たったニ、三か月ですよ。そういう博士は変わらないですね」
「あははー、もうボクに成長期は来ないからね。そうそう変わりはしないよ」

相変わらず、間延びしたような声で話すプラターヌ博士。
私はしょっちゅう髪型や服装を変えているけれど、博士はなにひとつ変わっていない。
いつものちょっと変わった髪型に、いつもの白衣に、いつもの笑顔。

「あれ?」

けど私はその時、博士のいつもと違うことに気が付いた。
博士の背後にある机に、灰皿とまだ火のついた煙草が置かれていたのだ。


「博士、煙草吸ってましたっけ?」
「ああ、これね」

忘れてた、と呟きつつ、博士はすぐに煙草の火をもみ消す。

「最近、少しだけど吸うようになってねー。ごめんね?煙たいだろう」
「いえ…ちょっと意外だなと思っただけです」

そう話しながら、プラターヌ博士は傍にある窓を手当たり次第開け放していく。
別に気にしなくてもよかったのに、と私がその様子をぼんやり見つめていると
博士は急に振り返って、

「あっ、セレナはまだ吸っちゃ駄目だからね!」
「わかってますよー」

わざと真面目くさった顔でそう言い放つ博士がおかしくて、私はつい吹き出した。

「ならよし。さーて、今日は何のご用かな?」
「顔を見せるついでに、図鑑が大分埋まってきたので見てもらおうと思いまして」
「そっかそっかー!どれどれ・・・」

図鑑を手渡すと、博士は素早く内容を確認していった 。
「いいねぇ!順調みたいじゃないか」そう言って博士が私のの頭をなでてくれる。
子ども扱いして。そう思ったけど、博士が相手だとなぜか不思議と悪い気はしなかった。

「しかも、色違いのポケモンもかなり見つけているみたいだし」
「最近、カルム達と色違いポケモン探しにハマってるんです!みんなで見せ合えば、図鑑が埋まるのも早いし」
「んー、なるほどみんなで協力しあってるんだね!素晴らしい!」

手放しで喜ぶプラターヌ博士に私がまた笑っていると、不意にホロキャスターへ着信が入った。
発信者はサナ。私はあわてて顔をあげた。

「あ、サナからだ!すみません、私・・・」
「うん。いやあ、今日はいいものを見せてもらったよ!またいつでもおいで」
「はい!じゃあっ」

手を振り、部屋を出ようとした私は、ふとあることを思いつき、
体をくるりと回してプラターヌ博士に駆け寄った。

「博士!・・・煙草はほどほどにしてくださいね!」
「・・・あはは!うん、ありがとう」

今まさに煙草の箱を掴もうとしていたプラターヌが一瞬固まり、そして苦笑いした。

ちらりと見たそのパッケージには、黒地に赤いラインが一本引かれ、小さく王冠の印のデザインが描かれていた。

                            
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ