小市民シリーズ

□夢にまで
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「常悟朗」

ほとんど壁に押し付けるような形で、健吾は僕に詰め寄った。
その表情はどこか堅い。

緊張でもしているのかな。
でも、どうしてだろう。

「…健吾?」

僕がぼんやり名前を呼ぶと、目の前の健吾はひとつ息を吸い、なにか決心したようだった。


「…好きだ、常悟朗――







――はっとして目が覚める。

「っ……」

目前には見慣れた天井。
辺りは薄暗く、窓から差し込む月の光だけがぼんやりと部屋を照らしている。
そこはぼくの部屋で違いなかった。

「……っはあ」

ベッドから体を起こし、しばらく止めていたらしい息を吐き出す。
そのあと空気を吸い込んだらむせ込んでしまって、ぼくは思わず苦笑を浮かべた。

「あー…」

ばたりと布団に倒れ込み、さっき夢で見た光景を思い出す。
あんな夢を見るなんて、きっと疲れているんだ。必死にそう思い込もうとして、ぼくは。

…ぼくは、なにか無性に隠れたくなって頭から布団を被って、火照る顔を手で押さえた。


(最悪だ。…あいつが居るのは、頭の中だっていうのに)


                    


  
<あとがき>小鳩くんに夢を見すぎた結果です。

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