小市民シリーズ

□くらくらり
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※頭のネジが一個飛んだような二人
※小市民然としてない





「今日はね、とっても素敵な日なの!」

学校へ向かうその途中、声を弾ませそう言ったのは小佐内さんだった。

「へえ」

なにかいい事でもあったんだろうか。
テレビの占いで一位だった、卵を割ったら双子だった、それから……
ぼくは小市民的な『素敵な日』基準をぼんやり考える。

「私、幸せだわ」

小佐内さんの口から出た「幸せ」という言葉に、とてつもない違和感を覚えるけれど、ぼくはにこりと笑って

「実はぼくも、今日はすごくいい日だと思ってる」

見え見えの嘘をつく。

「小鳩くんも?」
「うん。…だって、小佐内さんが幸せならぼくも幸せだからね!」
「素敵!」

小佐内さんは大げさに飛び跳ね、その小さな体をくるりと一回転させる。

そして、どちらからともつかずにぼくたちは声を出して笑い出す。
ふふふ、あはは。

幸い、周りには人は居ない。



そうして、ひとしきり笑ったあと。
小佐内さんは人差し指を立てて、意外な提案をしてきた。

「ねえ小鳩くん、これから一緒にどこか行かない?」
「どこかって?」
「例えばそうね、映画館とか」
「良いけれど…学校はどうするの?」

今は登校中なのだ。
ぼくの当然の問いに、小佐内さんはうーん、と少し考えるような仕草を取ると

「1日くらいお休みしたって平気よ」

なにをもって平気なんだろうか。
あ、そういえばぼく今日日直だったなあ、と思い出したけれど

「まあ、そうかな。うん、じゃあ行こうか」
「うん!」

小佐内さんが、花のような笑顔で右手を差し出す。

それにつられてぼくもまた笑いながら、彼女の手を取った。





<あとがき>
小市民好きさんに頭を下げたいような文しか書いていない!絶望!
狂ってるの分かってて狂ってる二人。

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