小市民シリーズ

□子供じみた独占欲
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※付き合ってます(重要)
嫌な予感がした人は戻ったほうがいいです





「常悟朗、ココア入れたぞ」
「…ん」

よほど本に集中しているのか、常悟朗は随分と気の抜けた返事をよこした。
俺はその隣に腰を下ろし、ココアの入ったマグカップをひとつ机の上に置いた。

「……面白いのか、」

その本。
手に持っていた自分のココアをふう、と息をかけて冷ましながら尋ねてみる。

「そんなに」

本から顔も上げずに常悟朗が答える。

「でも、来てからずっと読んでるだろ」
「じゃあ、普通」
「じゃあってなんだ」
「別にいいだろ、健吾が読むわけじゃ無いんだし」
「…まぁ、それはそうだが」

なんかこいつ、いつにも増して素っ気無くないか?
俺はそう思いながら、机の隅で積み重ねられた本をみた。これだ。これのせいだ、間違いなく。

「しかしお前、急に家に来たかと思えばずっと本読んでばっかりってのはどうなんだ」
「健吾、どこか出かけたいの?」
「…そういう事じゃなくてだな」

二人きりなんだから、もうすこし恋人らしい過ごし方もあるだろう。
しかしそんなこと面を向かって言えるはずも無く
俺があー、とかうー、とか言葉に詰まっていると、ようやく常悟朗が本から目線を上げた。

「何かしたいことでもあるの」
「な」

直球過ぎる問いに、思わず気の抜けた声が出た。

「…なにって、お前なあ」

常悟朗はきょとんとした顔でこっちを見ている。本気でわかってない時の顔だ。
くそ。頭は回る奴なのに、どうしてこういう事には鈍いのか。

「……健吾?」

顔を覗き込まれる。
ああ、もう知らんからな。鈍すぎるお前が悪い。鈍感なのは一種の罪だ。
頭のなかで自分勝手な言い訳を並べて、

「構え、常悟朗」
「は?」

意味が分からないという顔のそいつを、俺は思い切り押し倒し、なにか言われる前にその口を塞いでやった。
                     
                         
  

 


                  
<あとがき>なんかもう、なんかもう全力でごめんなさい!でも楽しかった。

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