青の祓魔師

□まるで一目惚れ
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神父さん(とうさん)に連れられて、祓魔塾に来ていた僕は、そこである人にあった。


「…君が、奥村雪男か」

第一印象。
低く響くような力強い声。

「は、はい」

自分の名前が、なにか神聖で、特別な言葉でもあるかのように感じて胸が高鳴った。
でも、そんなにも力強い声をしているのに、片目だけの瞳はどこか寂しげに見えて、僕は思わず先生に見入ってしまう。

「イゴール・ネイガウスだ…宜しく」
「っあ、よ、宜しくお願いしま…す!」

我に返り、慌てて直角に頭を下げると、隣に居た神父さんはけらけらと笑いながら僕の頭に手を置いた。

「こいつは仏頂面だけど、怖くはねぇぞ雪男ー」
「えっ?」
「……」

父の言葉に、ネイガウス先生の眉間にシワが寄るのが分かった。
僕は慌てて神父さんの服の裾を引っ張る。

「ち、違うよ神父さん…緊張しただけ!怖いだなんて思ってない!」
「あ、そうか?悪い悪いー」

謝りながらも、にやけた様な表情の神父さんに、僕は本当だってば!と僕は念を押す。
しかしネイガウス先生は、半ば諦めたかのように

「…まあ、仏頂面なのは否定しないがな」

なんて言い出したから、僕は思わず声を張り上げる。

「そ、そんな…!ネイガウス先生、とても格好いいじゃないですか!!」


…途端、神父さんとネイガウス先生が驚いたような表情をして僕を見つめた。


「……え、あ、あの」

いきなり大人ふたりに見つめられて、僕は焦り、後ずさる。
5秒ほどその場に沈黙が続くと、神父さんがふいにくつくつと笑い出した。

「……は、はは…っ格好いいってよ!良かったなイゴール!」
「…藤本獅郎、笑ってやるな」

ネイガウス先生は何かこらえたような表情で、しかし神父さんを咎める。

「僕…なにか変なこと言いました…?」

そんな二人の反応の意味が分からず、僕はおずおずとネイガウス先生に問いかけた。
すると先生は一瞬困ったようにはにかむと、僕の目線に合うように腰を下ろし、頭に手を置く。

「…いや。ありがとう」
「…!」

その優しげな声色と仕草に、くらり、眩暈がした。
おまけに心臓がばくばくいってすごくうるさいし、顔があったかい。

(な、なんだろう…?)


幼い僕にはこの動悸のわけが、いつまでも分からないままだった。 






<あとがき>
別タイトル・雪男くんのはつこい。こんな出会いも、無きにしも非ず(いやない)

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