「…………いけない、もうこんな時間…!」

障子の隙間から差し込む朝陽に、私は目を覚ました。
昨夜、斎藤さんの部屋で逢瀬のあと、そのまま寝てしまったのだ。

私が布団から起き上がると、傍らで眠っていた斎藤さんの目蓋がゆっくりと開いた。

「ん……、もう朝か……」

「あ……斎藤さん、すみません、起こしてしまって……」

慌てて布団から出て身仕度を整えようとする私の手を、斎藤さんの手が掴んだ。

「……あれから、まだいくらも寝てはいないだろう」

「でも……、朝餉の支度をしなくてはいけませんので――――――!」

斎藤さんの手を取って布団に戻そうとすると、そのまま腕をぐい、と引っ張られ、斎藤さんの上に覆い被さるかたちで倒れ込んでしまった。

「あっ、す、すみませ………!」

慌てて起き上がろうとする私の腰に逞しい腕が巻き付き、斎藤さんに強く抱き締められ狼狽える私の唇を、下から柔らかなものが塞いだ。

寝ぼけた頭で身動いでいるうちに、斎藤さんのもう片方の手が私の頭の後ろにまわされ、もっと深くふたつの唇が接合された。

息を継ごうと開いた口の隙間から差し込まれた熱い舌が私の口内を暴れると、頭の芯がジ…ンと痺れて、身体の奥から蕩けたように力が抜けてゆく……。

「……ん…、…ふ…ぅ…」

やっとのことで唇が離されると、私はそのまま斎藤さんの肩に顔を埋めて、腰が抜けたように起き上がれずにいた。

「……昨夜は随分無理をさせてしまったからな……。飯の支度は任せて、お前はもう少し寝ていろ」

そう言って私を布団に横たえると、斎藤さんは黒い着流しに袖を通して部屋を出ていってしまった。



あとに残された私は、斎藤さんが出たあとのまだ暖かい敷き布団に頬を埋めた。

あともう少し……斎藤さんとふたりで居たかった――――――なんて、思ってしまうのは我儘だろうか。

私は気合を入れるように自分の頬をぺしゃりと叩くと、布団を片付け炊事場へと急いだ。















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