夢小説二
□雨
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気が付くと、私は見知らぬ布団に寝かされていた。
起き上がろうとして、首の辺りの涼しさに見てみると、びしょ濡れになった着物ではなく、旅館の浴衣に着替えさせられていた。
周りを見回すと、窓のそばに土方さんが立っているのが見えた。
「……土方さん…」
声をかけると土方さんがこちらを向いて、一瞬安堵したような優しい表情を浮かべ、私の傍へやってきた。
そしてすぐに眉間に皺を寄せ、厳しい顔をした。
「…馬鹿野郎、あんなところで何してた!」
急に怒鳴られ、私はびくっと震えてしまった。
「…こんな雨の中、長いこと外にたってたら、風邪ひいちまうだろうが!」
「……ごめんなさい…」
私が謝ると、土方さんはふぅ、と溜め息をついて、目を細めた。
急に土方さんの腕がのびてきたかとおもうと、次の瞬間、私は土方さんの胸に抱き締められていた。
「―――――――心配かけさせやがって…」
暖かい腕の中、私は土方さんの胸に顔を埋めた。
土方さんの心臓の音が、少し早い…。
「…すみません…。雨が降ってきたので、土方さんをお迎えに出たんですが、すごい雨で…。びしょ濡れじゃ、お店入れませんもんね…」
「…俺は別に濡れたって構わねぇ。それより、お前が倒れちまったら、俺は―――――――」
土方さんが急に黙りこんだので顔を上げると、紫黒の瞳が私を捉えた。
「……千鶴…」
土方さんの端正な顔がゆっくり近付いてきて、唇が重なった。
最初はただ重ねるだけの口付けは、次第に互いを貪る熱いものへとかわっていった。
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