夢小説一

□泪月
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 ―――――朧。月が霞んで見えた。

手を伸ばせばすぐに触れられそうなのに、手が届かない…
まるで月のような貴方を想い、今宵もこの身を焦がす…。



もう春だというのに、季節はずれの雪が朝から降り、ほころびかけた桜に降り積もっている。

土方さんは昨夜も遅くに屯所に帰って来たというのに、今朝も早くから出掛けてしまい、夕食にも戻ってこなかった。
近藤さんのため、新選組のため、土方さんは方々に出向かなくてはならず、私は屯所で留守番の日々が続いた。

あの日―――――。

土方さんに抱かれてからというもの、土方さんと顔を合わせるのがとても気恥ずかしくなり、あの燐とした紫黒の瞳を見るだけで、この胸はきゅっと締め付けられるように痛んだ。
土方さんの背中を見詰めるだけで、身体の奥が熱く疼いているのを感じた…。

土方さんの手の感触、体温、熱い唇…すべて覚えている。

会えない時間が、想いを発酵させ、熟成させるのだろうか。

あれから、何度も土方さんの夢を見た。
夢の中で、土方さんは私だけを見詰め、優しく微笑みかけてくれた。
そして、あのときのように、私を求めてくる…。

夢の中でいくら抱かれても、目覚めたあとには虚しさだけが残った。



自室で独り土方さんのことを想いながら、袴の脇から熱く疼く秘所に指を這わせると、ジ…ンと、痺れるような快感が背筋を駆け抜けた。
身体は震え、更なる刺激を求めて、腰がゆるゆると蠢いてしまう。
こんな恥ずかしいこと…と、頭のどこかでは考えながらも、込み上げてくる欲情に、私は抗うことが出来なかった…。

「…っん…」

冷たくなった指は、まるで自分のものではない感覚がして、次第にそれは土方さんの指へと変じていった。


―――――土方さんは私を床に横たわらせると、袴を脱がせ着物の裾を捲った。
熱い口付けを交わしながら、土方さんの指が内股を伝って私の秘所へと伝う。

「…あっ…」

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