夢小説二
□吃逆
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「ヒック、ヒック…」
今朝から急に始まったしゃっくりに、私は悩まされていた。
炊事場で夕餉の仕度をしているのだが、お芋の皮剥きすらままならない。
「あ〜!もう…っ!…ヒック」
「…あれ?千鶴ちゃん、どうしたの?」
癇癪を起しながらお芋と格闘する私の背後から、沖田さんがひょっこり顔を出した。
「あぁ、沖田さん。朝からしゃっくりが止まらなくて…っん!」
包丁を置き沖田さんの方を振り向いた私は、そのまま向い合わせで抱き締められ、唇を奪われてしまった。
「…ん…んぅ…っ」
次第に激しくなる口付けに息が苦しくて、沖田さんの胸を叩いた。
「……はぁ…、もう…っ!急に…何するんですか!」
唇を解放され慌てて息を吸い込む私を、沖田さんはニヤニヤと笑みを浮かべて見詰めている。
「…何って、千鶴ちゃんのしゃっくりを止めてあげたんだよ?」
「……え…?」
「だって…ほら、止まったでしょ?しゃっくり」
急にあんなことをされて忘れていたが、そういえばしゃっくりが止まっている…。
「……あ、本当…。沖田さん、ありがとうございます!」
「またしゃっくりが出たら、いつでも僕に言ってね。治してあげる」
沖田さんは得意気に笑うと、炊事場を後にした。
「…さぁ!しゃっくりも治ったし、残りのお芋も一気に剥いちゃおう!」
意気揚々と振り向くと、そこにはこれ以上無いほどに赤面した炊事当番の平助君が立っていた…。
END
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