夢小説二
□迷路
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高窓から月の明かりが射し込めて、薄暗い室内を蒼白く照している。
身体中が軋むような痛さに起き上がる気力もなく、千鶴は突っ伏したまま顔だけを横に倒して、暗闇に凛と耀く月を恨めしく見詰めていた。
あれから…、もう何日たったのだろう…。
あの恐ろしい程に美しい満月の夜。
白髪に赤い目の恐ろしい化け物に襲われそうになった千鶴は、浅葱色の羽織をきた男達に助けられた。
千鶴は男達の屯所に連れていかれたが、それは千鶴を保護する為ではなく、見てはいけないものを見てしまったがための措置だったのだ。
そして、千鶴の監禁生活は始まった―――――――
「…悪いが、縛らせてもらった」
千鶴が意識を取戻し重い目蓋を開けると、黒髪を緩く後ろで束ねた男の顔が目の前にあった。
深い海の底のような蒼い瞳…。
「一くん、べつにいいじゃないそんなの。暴れるようだったら斬っちゃえばいいんだから」
突然背後から聞こえた恐ろしい台詞に、千鶴は驚き振り向こうとしたが、うまく身動きが取れない。
そう、千鶴は両手を縄で拘束され、埃っぽい板張りの床に仰向けに転がされていたのだ。
蔵の中なのだろうか。薄暗い室内には窓もなく……いや、窓は閉ざされているのか、今は夜なのか、それとも昼間なのかも分からない。
肌寒さに下を見ると、捕まる前に着ていた男物の着物は脱がされ、襦袢一枚にされていた。
―――――よかった、晒は取られていない。
「…ねぇ、君は何であんなところに居たの?……もしかして、僕たちのことを探ってた…?」
一…と呼ばれていた黒髪の男を押し退けるように、栗色の髪の男が急に千鶴の前に現れた。
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