夢小説二

□夏の終りに
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 「―――――ったく、要らねぇ気遣いやがって」

屯所から届けられた文を読みながら、思わず口許が弛む。

「…土方さん、どうしたんですか?」

後ろから、ひょっこりと顔を出した千鶴が、俺の手元を覗き込んだ。

蹲んだ俺の肩に、柔らかい感触が当たっている。

「近藤さんからだ。――――連中、急に用が出来て、此処には来れなくなったんだと。……ったく…」

今日は年に一度の花火大会だ。
慰労を兼ねて幹部連中と千鶴で宴会をしようと、花火がよく見える馴染みの旅館に部屋をとっていたのだ。

近藤さんが千鶴のために浴衣を用意してくれて、着替えのために俺は千鶴と先に旅館に来ていた。

隣室で着替えを済ませ、そっと襖をあけて覗かせた千鶴の顔…。
久しぶりに袖を通した女物の浴衣が気恥ずかしいのか、ほんのりと赤く上気した頬が、堪らなく色っぽかった。

本当は、千鶴のこんな格好、他の奴らには見せたくなかった。
俺の腕のなかに閉じ込めて、誰にも見られねぇように、隠しちまいたかったんだ…。

俺の想いは近藤さんの計らいで、思わぬところで現実となった。

千鶴と花火を見ながら、旅館で二人きり…。
俺の胸は馬鹿みてぇに高鳴っていた。

九月ともなるとすっかり陽が暮れるのが早くなり、薄暗い部屋の中で俺達は花火の開始を待った。

「…まだですかね…?花火…」

何度も何度も窓の外を眺め、そわそわと落ち着かない様子の千鶴。
こんな大規模な花火大会は初めてだとは聞いていたが、そんなに待ち遠しいのか。

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