夢小説二
□伽羅
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私は恍惚と目を開けた。
床に置かれた蝋燭の灯りがゆらゆらと揺れながら、仄かに辺りを照らしている。
薄暗い空間に麝香と沈香、そして甘い花の香が立ちこめていた。
浴室と同じ薫り…。
湯殿での前戯のあと、千景さんに連れてこられた寝所は、とても 幽玄な空間だった。
西洋のものだという寝台は木箱のような形をしていて、その上にのせられた布団は厚みがあり、私の身体が沈むほど柔らかかった。
高い天井からは柔らかく薄い布が蚊帳のように吊られ、辺りが透けて見えた。
「…何を惚けている」
寝台が軋む音がしたかと思うと、羽織っていた夜着を脱ぎ捨て、私の上に千景さんが覆い被さってきた。
細身だけれど腕や肩には程よく筋肉がついた引き締まった体躯に、思わず赤面してしまう。
「…あっ…!」
私の上に掛けてあっただけの寝間着を剥ぎ取られ、咄嗟に手で身体を隠そうとしたが、両手を千景さんに捕らわれてしまった。
「…先刻あれだけ乱れておいて、今更恥ずかしがることもないだろう」
両手を頭の脇に強い力で押さえ付けられ、緋色の双眸が私の全身を嘗めるように見詰めた。
牡の焔を宿した紅い瞳に射竦められると、私はこれからおこるであろう快美を予期して、動けなくなってしまう。
「…や…っ、…恥ずかしい…」
羞恥に見悶える私にはお構いなしに、千景さんは両手を磔たまま、私の首筋に顔を埋めた。
「…あ…んっ…」
甘い香の薫りを含んだ柔らかな髪が、私の頬をくすぐる。
ちゅ、ちゅ…と音をたてながら首筋に吸い付き、耳朶を甘噛みされると私の唇からは甘い声が洩れた。
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