夢小説二
□我儘
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雨上がりの昼下がり―――――――
私は近藤さんに呼ばれ、広間へ向かって廊下を歩いていた。
新選組の屯所に置いて頂く様になり、近藤さんや土方さんにちょっとした用事を言い付かるようになって、何の取柄も無い私でも少しは皆さんのお役に立てているのかと思うと、頑張って応えようという気になってしまう。
何の御用かなぁ…と、期待に胸を躍らせ歩いていると、突然後ろから羽交い締めにされてしまった。
「きゃっ…!」
沖田さんだった。
悪戯っ子のような笑みを浮かべ、沖田さんが私の耳元で囁いた。
「…千鶴ちゃん…」
沖田さんの手が、私の懐に入ってくる。
「――――ねぇ…、シたくなっちゃった…」
「…やっ…ダメですっ!…いま、近藤さんに呼ばれてて、広間に行かなくちゃならないんです!」
後ろからぎゅっと抱きしめられ、流されそうになる自分を必死に抑えて、私は返事をした。
そんな私の気持ちも知らず、沖田さんは不満そうに言う。
「…近藤さん?―――――じゃぁ、仕方ないけど…」
寂しそうな沖田さんの表情に思わず、
「…近藤さんの用事が済んだら、戻ってきますから」
と言ってしまった。
「――――本当に?……戻ってきてよ。待ってるから」
沖田さんの瞳が爛々と輝いた。
「…は、はい」
沖田さんは私の額に軽く口付けをすると、抱きしめていた手を離してくれた。
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