夢小説二
□君の声
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―――――――あの日。
無理矢理奪われ傷付けられた、あの恐ろしいほど綺麗な満月の夜から、沖田さんは私の前に姿を見せなくなった。
近藤さんは薬も飲まない沖田さんの事を心配して、私に様子を見に行くように言ったが、私は沖田さんに会うことが出来なかった。
それは、沖田さんが怖いからではなく、揺れ動く自分自身の気持ちが怖くて堪らなかったのだ。
「―――――――くん」
「―――――――雪村君!」
庭の掃き掃除をしながら考え事をしていた私は呼ばれていたことにも気付かず、すぐ傍で山崎さんの声がして、はっとした。
「あっ…、山崎さん。何か御用ですか?」
「…沖田さんの事なのだが…、やはり会いに行ってくれないだろうか…」
「・・・・・・」
沖田さんのことを出され、思わず黙り込んでしまった。
「君と沖田さんの間に何があったのかは分からないが、君なら彼に会うことができるのだ。
…このまま薬も飲まず、ろくに食べ物も口にしないのでは……」
山崎さんが、その先を言い淀んだ。
「…沖田さんは……、死んでしまうのですか?」
私の言葉に、山崎さんが凍りついた。
「……君も知っているだろう、彼の病を…。薬で延命することは出来ても、今の医学では完治することはまず無理だ。
しかし、このまま全てを拒んでいては、明日の命だって知れない。……副長もそれを心配している」
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