小説(パラレル)
□DogStyle
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サンジさんちには犬がいる。
「おーす、ゾロ。元気かー?朝飯だぞー」
ご機嫌な様子で庭に現われたサンジ。その声に反応して犬が鳴きだす。低くてハスキーないかつい声だ。
「こらこら、そんなに暴れなくても今やっから」
呆れつつでも嬉しそうに言いながらサンジは愛犬の前に立った。
変わった緑色の毛並みをした犬は、頑丈な鎖を引きちぎらんばかりの勢いでガシャンガシャンと立ち上がってはサンジに前脚を伸ばしている。
後ろ足で立つと長身のサンジと同じくらいの高さになるからかなり大型の犬だ。犬というより狼といったほうが近いか。
犬用のエサ鉢に不釣り合いな、わざわざ犬のために手作りしたと見られる山盛りの豪華なエサをゾロの前に置いて、
「待て」
これをしないとエサにありつけないのでゾロは渋々前足をそろえてちょこんと座る。
「お手」「おかわり」「ちんちん」
一通りこなして始めて、「よし」の声が聞ける。
額に青筋浮かべながらガツガツとエサを貪るゾロを、しゃがんだまま頬杖ついて満足そうにながめるサンジの顔はまさに天使だ。
「うまいかー?今日はお前の好物ばっかり入れてみたんだ。クソうまいだろ?」
「ウォフッ」
ペロリと平らげてゾロは短く吠えた。
「ははは。そうかうまかったか。じゃあオレは仕事行ってくるからおとなしく留守番してるんだぞ」
頭をがしがしと撫でると、また立ち上がってジタバタと前足でサンジを掴もうとする。そのたびに鎖がガシャンガシャンと凄い音をたてる。
「ウォフッウォフッ(腹ごなしにやらせろエロ眉毛)」
「ははは。寂しいか?よしよし。昼寝でもしていい子してろよ。じゃあ行ってくるな」
狂犬の獰猛な思惑など微塵も気付かないまま、サンジは満面の笑みで手を振って空のエサ鉢を片手に去っていった。
「ウォウォフッ!ウォフッウォフッ(待てクソまゆげ!やらせやがれ!)」
今すぐ華奢な背中に覆いかぶさって思いっきりぶちかましてやりたいのに、サンジのジジイとやらにつけられた頑丈すぎる首輪と鎖が邪魔をする。
「グルルルル…」
忌々しげに鎖を睨むと諦めてふて寝した。
(見てろよ。今にこの鎖を引きちぎってあの小さいケツにぶちこんでやる)
「グルル…」
恐るべき魔獣は低く唸ってからゆっくりと瞼を閉じた。