蒼空回想_ソラカイソウ_

□第一話
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薩摩から、脱藩して、もう2月は経つ。


俺は、特に行く宛てがあるわけでもないから、1人で各地をうろうろしていた。





――――、でも、それももう限界だった。


持ってきていた、資金がそろそろ底を尽きそうなのだ。



『 仕事、探さねぇとな。 』


ため息交じりの独り言をつぶやく僕。


幸いというか、今僕がいるのは、京の町。
ここでなら、なんとか仕事を見つけることができるかもしれない。


でも、“女”を捨てた俺は、仕事なんてろくに何もできやしない。


どうしようか...、と途方に暮れていた俺の耳にある言葉が入ってきた。


「 餓鬼のくせに、いいもん持ってんじゃねぇか。 」


ちらっと、その方向をみると小柄な少年(なのか?)が2人の浪士に絡まれている。


厄介ごとは、ごめんだけど、今はいいか。


と、思いつつ俺は、その子と浪士の間に割り込む。


「 なんだ? お前は。 」


不機嫌そうな声で、いいつつ俺を睨んでくる浪士。
でも、ちっとも怖くはない。



『 離してあげなよ、 』


俺は、低めの声で言ってやった。

浪士たちは、一瞬怯んだようだがまだ引き下がらないようだ。


仕方ないか...、うん。

強行突破?だ。


『 ...行くぞ。 』


そう、少年(のような子)に小さな声で告げて、手をつかんで走り始める。


後ろから、浪士が追いかけてきていたが俺は、何ら気にしなかった。



※    ※    ※



『 ここまで、来れば大丈夫だろ...。 』


と言い、掴んでいた手を放す。


「 あ、あの。ありがとうございました。 」

少年(のような子)は、俺にお礼を言ってきた。

...この声からして、...この子絶対に...女の子だ。

『 別にいいよ...。 というか、女の子の1人旅は危ないよ。 』


「 はい? どうして...『 いや、声からして、女の子だし...。 』 そんなんですか...。」

その子は、あきらさまに悲しそうな顔をした。

( 素直な子だな...。 )


純粋にそう思った。


『 じゃ、俺は失礼するよ。また、縁があったら会おう。 』


と言い、場を去ろうとする俺をその子が引き留めた。

「 すいません。 お名前、聞いてもいいですか? 私は、雪村 千鶴といいます。 」


雪村さんは、そういいお辞儀をした。


『 悠弥。 ...蒼空 悠弥という。 』

俺は、次こそ、その場を去った。




彼女がこれから、災難に遭うとも知らずに――――。










京の町で―――




(...素直な女の子に出逢った。)









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