蒼空回想_ソラカイソウ_
□第一話
1ページ/2ページ
薩摩から、脱藩して、もう2月は経つ。
俺は、特に行く宛てがあるわけでもないから、1人で各地をうろうろしていた。
――――、でも、それももう限界だった。
持ってきていた、資金がそろそろ底を尽きそうなのだ。
『 仕事、探さねぇとな。 』
ため息交じりの独り言をつぶやく僕。
幸いというか、今僕がいるのは、京の町。
ここでなら、なんとか仕事を見つけることができるかもしれない。
でも、“女”を捨てた俺は、仕事なんてろくに何もできやしない。
どうしようか...、と途方に暮れていた俺の耳にある言葉が入ってきた。
「 餓鬼のくせに、いいもん持ってんじゃねぇか。 」
ちらっと、その方向をみると小柄な少年(なのか?)が2人の浪士に絡まれている。
厄介ごとは、ごめんだけど、今はいいか。
と、思いつつ俺は、その子と浪士の間に割り込む。
「 なんだ? お前は。 」
不機嫌そうな声で、いいつつ俺を睨んでくる浪士。
でも、ちっとも怖くはない。
『 離してあげなよ、 』
俺は、低めの声で言ってやった。
浪士たちは、一瞬怯んだようだがまだ引き下がらないようだ。
仕方ないか...、うん。
強行突破?だ。
『 ...行くぞ。 』
そう、少年(のような子)に小さな声で告げて、手をつかんで走り始める。
後ろから、浪士が追いかけてきていたが俺は、何ら気にしなかった。
※ ※ ※
『 ここまで、来れば大丈夫だろ...。 』
と言い、掴んでいた手を放す。
「 あ、あの。ありがとうございました。 」
少年(のような子)は、俺にお礼を言ってきた。
...この声からして、...この子絶対に...女の子だ。
『 別にいいよ...。 というか、女の子の1人旅は危ないよ。 』
「 はい? どうして...『 いや、声からして、女の子だし...。 』 そんなんですか...。」
その子は、あきらさまに悲しそうな顔をした。
( 素直な子だな...。 )
純粋にそう思った。
『 じゃ、俺は失礼するよ。また、縁があったら会おう。 』
と言い、場を去ろうとする俺をその子が引き留めた。
「 すいません。 お名前、聞いてもいいですか? 私は、雪村 千鶴といいます。 」
雪村さんは、そういいお辞儀をした。
『 悠弥。 ...蒼空 悠弥という。 』
俺は、次こそ、その場を去った。
彼女がこれから、災難に遭うとも知らずに――――。
京の町で―――
(...素直な女の子に出逢った。)
→ NEXT あとがき