短編集

□手放せない
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馬鹿な女の子ね。
私が気づいていないとでも思っているの?

彼の欠点は浮気癖。
でも、そのおかげで彼と付き合えることになったのは、
私にとっては幸いなことだったのかしら?

私が入社した時には、彼には交際していた彼女がいた。
その人は私の仕事の先輩。

周囲には交際を公表していないようだけれども、女の勘で二人の関係は
仕事仲間だけではないと思った。

さりげなく先輩に「仲いいですよね?もしかして付き合っています?」と訊ねても、

「全然、そんな仲じゃないわよ」と、誤魔化すから、
良心の呵責に苦しむ心配がなくなり、彼からの再三にわたるデートの誘いを、やっと承諾した。

数人の男性経験がある私でも、彼のエスコート術には、魅せられた。
相当の手練(テダレ)で、経験豊富だと思った。

危険な男だから注意しなければと予防線を張っていたのに、
みごとに捕らわれてしまったのは計算外。

癪に障るから、彼も私の虜にさせて、先輩との縁を切らせた。
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