短編集

□マグカップ
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ソファで英文小説を読んでいる彼のために、
紅茶を淹れて、お揃いのマグカップに注ぎ、
両手に持って彼の傍に戻り、
水色のカップを差し出した。

彼は「サンキュ」と、短く礼を言って受け取り、テーブルの上に置く。
座っていた位置を少し横にずらして、
無言で隣に座ることを促し、
私は自分のカップを両手で抱えて、
こぼさぬように、静かに寄り添った。


一口コクリと飲んで、
彼にピンク色のカップを渡し、
彼も同じく一口飲んでから、
水色のカップの横に置いた。


テーブルの上には、お茶を淹れる前に、
私が読んでいた雑誌があり、
彼はそれを取ろうとしたが、
目が疲れた私は、
続きを読む気になれなくて、
彼の手を押さえて、首を横に振り、
自分の耳を人差し指で、トントンと軽く叩いた。
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