fiction
□Basic
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言葉はいらない
好きだといって
約束がほしい
キスをして
Basic
「先生抱いて」
黒髪の美少女は扉を開けるなりそう言った。
前触れなく、唐突に。
恥ずかしがる様子も見せず、艶やかな髪をなびかせて
真面目で清潔そうな生徒、土方十四乃はただ堂々と現れた。
先生、と呼ばれた人物−
保健医の高杉晋助は数秒固まり
ふ、と息をつく。
「…この前まで乳飲んでたガキがほざくな、却下」
玉砕。
だが彼女はひるまなかった。
もともと鋭い目尻を更に吊り上げて唇を噛む。
すっと高杉へ近づいた。
「俺じゃ勅たねぇ?」
哀しそうに瞳を揺らす。
じっと鈍くギラつく紫と漆黒を合わせて、儚げに睫毛を震わせた。
惜しくも反応はない。
だが微かに何かを考えているような顔つきに変わる。
いけるか、ダメか。
胸の中で期待と不安が混じり合う。
高杉は沈黙を好んだまま、ギッとスプリングがきいたチェアから立ち上がった。
土方の長い髪をするりと指にかけ、徐々に距離を縮める。
−やった…!
不安の色を打ち消して、瞳を輝かせた。
先生に抱かれたい一心で。
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