fiction
□ParaNormal
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手に入るものと
手に入らないもの
その区別が出来るようになった頃、
まだ欲しいと思えるものはなかった。
何もかも満たされていると感じていた。
けれど
ParaNormal
独特の匂いが服に馴染むのを邪険に思いながら
ガブリとハンバーガーにかじりついた。
シャキシャキと噛む音が歯を伝わって耳に届く。
自分の目の前に座った同級生の山崎が
うわあ、と小さく鳴いた。
「めちゃくちゃ頬張りますね」
「おう」
噛んだものを喉に通して、ジュースのストローを啜る。
ハンバーガーとジュースが混ざり合って味はよく分からない。
時間に迫られている訳ではないが、部活後はいかんせん腹が減る。
となるとこういう風にがっついてしまうのはもう習慣だ。
最後の一口を大きく開いた口に放り込んで平らげた。
トレーの上には紙屑と店の名が大きくプリントされた紙コップだけになる。
きゅっと袖で口許を拭い、山崎を見やった。
まだ彼はとろとろと食事をしている。
そんな姿を見つめながらストローを噛んだ。
ストローの形が原形を保たなくなったころ、
妙な沈黙を破ったのは軽いトーンの重い声。
「山崎、聞いて驚くな」
「はい?」
食べ物に視線を落としていた山崎が顔を上げる。
濃い茶色の瞳が不思議そうに揺れた。
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