>銀新・AllキャラSS

□だんだん(買出し)
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 昨日、買い物の帰りに嫌なものを見つけた。
 これはどう考えても良くないものだから、僕だけの秘密にしようとそう思った。




 ぱたたたた、と軽い音を立てて夕暮れの江戸の町を銀印のスクータが走る。
 スクータのケツに跨って、新八は買い物リストを確認している。
 時折冷たい突風が吹いて、「秋の収穫祭」なる見出し付きの広告裏を使ったメモ用紙は飛んでいきそうになる。


「おーい。いつもんとこでいいの?」

 運転する銀時が気の抜けた声をかけてくる。右手にチュッパチャップスを持っている彼の背中からは、時折甘い匂いが流れてくる。

「あー、違います。商店街が売り出しやってるから、そっち行ってください」
「マジかよ。さっきんとこ曲がるんじゃねえか」
「こっちからでも行けるでしょ。あんた喫茶店の前通りたいだけじゃないですか」
「溢れる生クリーム見て渇いた心を潤したいんだっつーの。銀さんの楽しみ奪うんじゃありませんよ」
「それだけですまないだろうがあんた。つーかそれが楽しみの二十ウン才って男としてどうなんですか」
「俺ぁまだハタチだ! 変にぼやかすんじゃねえ」

 なんか寂しいだろ、と銀時の背中がぶつぶつ言う。
 へえじゃああんた攘夷戦争の時まだ赤ん坊だったんだ、と言い返したりはしなかった。
代わりに鼻で笑ってやりながら新八は「そこ右」と指示を出した。
 へいへい、と銀時が身体を倒す。おんぼろなのだ。体重かけないと曲がれない。
ならって身体を倒す新八に、銀時が肩越しに視線を寄越した。
 にやりと笑う天パ上司に、新八は怪訝な顔をした。

「なんですか。もっと?」
「いんや」

 何でもね、とどこかくすぐったそうに笑って、銀時は前を向いた。

「飛ばすよー」
「え、ちょっと、どあ!」

 相変わらず低いテンションで思い切りアクセルを踏まれ、新八の買い物リストは風に吹っ飛んでいった。


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