>おお振りSS

□ミハシトタジマ
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 ふしゅう、と口から漏れた息の熱さに、三橋は自分でびっくりした。
  昨日の熱が残る身体はすごく熱い。脳みそは相変わらずふかふかとしたまんまだ。きらきらと舞う埃。窓から降り注ぐ日射し。
  寝苦しさに、三橋はシーツが冷たい場所を探す。手を伸ばし(ダメだこっちは日が当たってる)、足を伸ばす(あ、ひやっこい)。

  ずずず、とすべって下に移動。筋肉に力入れんのは辛かった。このまんまだと顔とか頬が熱い。ころんと転がってひっくり返る。
  天地逆になって、三橋はほっと一息ついた。
  見上げた天井は少し新鮮だ。みたことない模様がある。木目の中の丸印。数えてたら、うとうとしてきた。ああまた寝ちゃうのかな俺。窓の外は光と緑に溢れてるのに。

  ひゃりりん!ひゃりりりん!

  曖昧な空気をぶち破る電子音。三橋はぱちりと目を開き、続いてがばりと起き上がる。途端に身体中がミシミシ軋む。痛い、それに重いようと涙を滲ませながら、ベッドに転がっていた携帯を掴んだ。
  開けようとして、ふと躊躇う。小さな液晶を恐る恐る覗いて、確認。

  ……あ、田島君、だ。

  阿部君じゃない、とほっとする。それでもなんだろうどうしたんだろうどビクビクしながらメール受信のボタンをポチリと押した。

『身体大丈夫か? 俺腹へったー! 三橋んちは昼飯何?』


  ぽかん、として、それからうわーっとうれしくなる。大丈夫か、だって! 心配、してくれてるんだ。
  田島君は、スゴイのに、優しい。阿部君も、スゴイけど、ちょっと怖い。田島君は修ちゃんみたいだ。似てる、と思う。

  もう一度メールを見直す。デジタル表示は10:52だった。あぁそうか、田島君、もうお弁当ないんだな。
  田島の弁当はいつも昼前になくなる。三橋も同じだ。一時間目と二時間目の間に、机合わせて一緒に食べる。三橋のハンバーグやらウインナーやらで一杯のカラフルな弁当を田島は気に入っていて、いつもとりかえっこをする。

  田島の家の茄子の挟み揚げが、三橋は好きだ。あとえのきの牛肉巻きも。ああいうのはお母さんは作ってくれない。忙しいから、だと思う。田島は三橋の家のハンバーグが好きで、いつも欲しがる。母親にそう言ったら、じゃあこれは田島君用ね! と別にもう一個つけてくれるようになった。感激した田島が家でとれた西瓜持って遊びに来たのはこないだの事だ。すごく甘い、とても美味しい西瓜だった。

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