運狂

□06
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―ここは、どこだ…―

―私は何をしている…?―




彼女は微かに見える視界をはっきりと見えるように、瞼を開けた。



少し古い木の木目が見えた。



そして、近くから包丁で何か切っている音が聞こえた。



なんで、ここに私が居るのだ?

ここに住んでいる…感じでもないな。

安心感も懐かしみも何も感じられなかった。


彼女は寝ている体を起こそうとした。
が、



「うぅ…!!!」



背中に激痛が走った。

だが、彼女は分からなかった。

この怪我はどこで受けたのか。
誰が何を持って自分を攻撃したのか。




ー全く分からなかった…ー




痛みに少し苦戦していた時だった。





「あっ起きたみたいね!
あんまり無理して動かないほうがいいわよ?」




可愛らしい声、少し大人っぽい容姿の女性が音が聞こえてきていた所から出てきた。




「怪我どう?まだ痛い?」




女性からの問いかけで少し困った様子の彼女だった。




「そんなに緊張しなくていいって!」



もうっ!!と手を口元において女性は少し笑った。



「…あなたは、」

「ん?」

「私を知っていますか?」



へ?と女性は間抜けな声を出し、口を開けた状態がでていた。




「一つ聞いていい?」

「はい…。」

「名前…あなたの名前は?あと、どこから来たの?」

「………」





どうすれば良いだろう…どう答えれば。




「わか分かりません…名前もどこから来たことも。」

「あららー…本当に?」




彼女は小さく縦に頷いた。




「記憶喪失…かもね。」

「記憶…そう、しつ……。」

「最近、聞いたのよ。大きなことが起こって記憶を一時的に失う…珍しいことなんだって!」

「だから、全く分からないんだ…」

「えぇ!?!」





女性は驚いた様子だった。
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