オリジナル小説

□トライアングルボーイ
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部屋は2階にあるにも関わらず
光は皆無であったが
キッチンのあるリビングはそこに比べれば
幾らか明るい

昔から親しんでおり
今日は俺たち以外誰もいないとはいえ
部屋で待たせているあいつにあらぬ疑いをかけられないためにも
そそくさとペットボトルを取り
忍び足で帰ろうと後ろを振り向くと



部屋にいたそいつが
まるでホラー映画のワンシーンのように
目の前に立っていた


「っ!?」


心臓がドクンッと跳ね上がるが
元来怖い物好きな俺は声を上げるまでには至らなかった



「お前、びっくりさせんなよ。
何付いてきてんだ。」

小声だが多少声を荒げさせても
こいつにはあまり意味がない

暗闇に潤んだ瞳が映し出される

「伸介…。」

愛おしむように
ゆったりと自分の名前を呼ばれると
溜息を吐きながらも抱きしめるしか
逃げ道はない




いつもは口の悪い世話好きの
人見知りでちょっと泣き虫な幼馴染みなのに
俺に泣きながら抱けとせがんだ日は
こうして朝まで甘え続ける


俺が利用しているつもりなのに
利用されているのは俺なのかもしれない

そんな考え
根っからのお人好しなこいつにはないと分かっているのだが
毎回このような展開になっているとそう思わずにはいられない


そしてなにより
こいつと居るのは案外悪い物でもない
と感じていることに
自分自身戸惑いがある










こんなにも簡単に立ち直れるものではなかったはずだ



12年間育てに育てた
もう一人の幼馴染みへの想い





そして
今日あっけなく砕かれた
俺の初恋は








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