オリジナル小説

□トライアングルボーイ
1ページ/6ページ




「…すー…」

月明りすら遮断された真っ暗な部屋に
時計の針の音と規則正しい息遣いだけが木霊する


数十分前
行われていた情事が嘘だったかのような静けさ

本能に忠実だった脳に理性が戻り
妙に冴え始めると
とてつもない喉の渇きを覚える

気怠い身体をゆっくりと起こすと
ベッドがきしっとわずかに軋んだだけなのに
俺と同等の大きさの手に腕を掴まれる

「どこ・・・行くんだよ。」

憂いを含んだ
少し低めの掠れた声が
暗闇に響く

「悪い、起こしたか。水取り行くだけだ。」

迷惑をかけないように
急いで起き上がろうとしても
腕を掴まれたままで自由が利かない

「…行くなよ。」

たかが水を取りに行くだけなのに
それほどまでに寂しがる必要があるのだろうか

手探りでそいつの頭を探り当て
弄る様に撫でまわした後
枕に押し付ける

その間俺の顔に表情はなかった

「お前は、俺の彼女かよ。」

それはこいつにとって
残酷で胸に突き刺さる言葉

俺が一番嫌いだと言ってきた“束縛されている”ことを表す言葉

静かであるが冷酷な声に
少しの間の後
しずしずと手を離した

その間にベッドからそそくさと脱出し
足音を立てずにキッチンへと向かう




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ