Short story
□貴方の笑顔は人を幸せにする
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貴方の笑顔は人を幸せにする力がある。
今日だって、貴方が笑っているから周りの方々も笑顔を絶え間なくこぼし続けるのです。
私はそんな貴方が羨ましいです。
「はぁ……今日も疲れました…」
今日アメリカで開かれた世界会議はいつものように踊り狂って終わった。
そんな当たり前のことが何故だかとても嬉しく思える。
私も爺なんですねぇ…
改めて思う少しショックである。
アルフレッドからの開国宣言から大分たっているのにそれが昨日の事のようにもおもえてくる。
今日は会議も早めに終わったことだし…
久しぶりに家でのんびりするとしようか。
最近大量の仕事におわれていて、ろくに自宅でくつろぐ時間もなかった。
ぽちくんの散歩にでもいきましょうか…
そう思い会議場のドアへと足を進める。
自分が横切った所で彼…アーサー•カークランドが仲間達と共に楽しそうに話をしていた。
やはり嫉妬してしまう所も多数ある。
自分だってもっとアーサーに近づきたい。
彼らと対等に話がしたい。
すべて叶えてしまうのならただの自己満足だ。決して人気者の彼を皆から取ったりなどしない、と言うよりは出来ない。
いくら好きでもこの気持ちが届くことはまずないだろう。
こんな東洋の小さな島国など彼はきっと目にも入れていないはずだ。
そんなことを思いながら会議場の出入り口のドアに手をかける。
後ろは振り向かない。
動揺してしまうから。
そして思い切りドアを開け早足で会議場を後にした。
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「あーあ…菊ちゃん行っちゃったよ………アーサー」
俺の隣にいた腐れ縁ことフランシスが言った。
俺は本田菊のことが好きだ。
男が男を好きになるなんておかしい話だが……でも実際そういう国いっぱいあるんだよな……
ルートヴィッヒとフェリシアーノとか、耀とイヴァンとか。
他にもたくさんいたりするんだなぁ…これが。
…………俺もそのうちの一人として含まれるのだが。
菊はモテる方だ。
男とは思えないほど可愛いし、謙虚で、可憐だ。
世界各国菊の事を狙っている、それは紛れもない事実だ。
現に俺の義理の弟―――アルフレッドも狙ってるという噂だ。
しかし俺もまだ告白という段階にはたどり着けない。
しかも、一番知られたくない奴に知られたし―――――
「お、俺だってまだ心の準備が……」
「……そうやっていつも逃げてていいの?」
「逃げてな……」
「お兄さんが取っちゃうよ?菊ちゃん可愛いし、お兄さん好きなんだけど?」
「なっ……」
そしてこいつは誰よりも鋭い。
いつもふざけたことを言うが、何でもお見通しだった。
俺もこいつに相談したわけではない。
図星を突かれたのだ。
「嘘だよーでも、本当にアーサーが行かなかったら……ね」
「お前ッ…………」
皮肉しかいえないが、これでも信用はしている。
認めているところもある。
流石は腐れ縁なのか、相談できないこともしている。
「行ってきなよ」
「え?」
不意にフランシスが俺に向かって言った。
「何か今行かないと間に合わない気がする」
「………は?なんだよ、それ」
「とりあえず行けっつーの」
「予言か。」
「お兄さんの勘」
「ははw」
「信じてないよね!?当たるんだよ!?勘!」
何て他愛もない会話もできる。
俺にとっては一番の理解者でもあり、ライバルでもある。
「……色々ありがとな。」
「なんだよ、改まって…まぁ、いつでも相談乗るし」
「あぁ、じゃあ行ってくる」
「うん、幸運を祈ります」
「はは」
俺はフランシスと別れの会話をした後、会議場のドアを勢い良くあけた。
そして早足で会議場を後にした。
航空へと急ぐ。
行き先は勿論日本だ。
オレンジ色のコサージュを持って―――――
一方会議場では、まだいくつかの国が残っており、会話が弾んでいたころだった。
フランシスはアーサーが去っていった後を最後まで見送り、ふと思い出したかのように椅子から立ち上がった。
そして会議場の窓際にぽつんと空を眺めている人物に声をかける。
「これでよかったのか?―――――アルフレッド」
若くして大国の地位を手に入れた青年、アメリカの分身ことアルフレッドだった。
彼は東洋の島国、そう、本田菊に惹かれた中の一人だった。
そして俺も。
さっきアーサーに言ったのも嘘ではない。
ただ、差し引いて告白する気は全くなかった。
彼、本田菊はアーサーのことが好きだから。
それは彼と付き合っていくなかで徐々に分かっていった事だった。
彼は感情を表に出さないタイプだ。
ましてや自分の意見なんて言わない。
いつもポーカーフェイスのような駆け引きだった。
けれど、彼のことを知っていくうちに、彼の中でアーサーの存在が特別なものに代わって行っている事が分かった。
本当は分かりたくなかった。
自分だけを見ていて欲しかった。
けれど彼は自分の腐れ縁――アーサー・カークランドを選んだ。
別に自分としては心から祝福していた。
しかしアーサーの義理の弟であり、菊と最も親しい友人であるアルフレッドはそれを受け入れようとはしなかった。
逆にアーサーの邪魔をしたときもあった。
けれど、彼の権力では菊の心は動かせなかった。
「……いくら大国でも手に入らないものもあるんだな」
アルフレッドが空を見上げながらポツリとつぶやいた。
少し寂しげに、けれどどこか吹っ切れていたような感じがした。
「それに、あの二人はきっとうまくやるよ。………少し悔しいけど。」
そうだ、いつも菊の隣にいたのはアルフレッドだった。
最も親しい友人として、いつも彼の隣にいた。
彼もそれだけでうれしそうな顔をしていたのを鮮明に覚えている。
でも、彼はアルフレッドを友人としてでしかみなかった。
彼が思いを寄せたのはアーサー、勿論アルフレッドは二人の邪魔をした。
アルは、アーサーが菊のことが好きだって事も、菊がアーサーのことが好きだって事も知っていた。
だからこそ最も親しかった友人として、憎悪があったんだろう。
――何故自分ではないのか、と。
――何故アーサーなのか、と。
しかし、今、この瞬間、アルフレッドの中で何かが変わって行った。
二人を祝福するという気持ち。
ただ純粋にそう思っていることが分かった。
彼は誰よりも菊の近くにいた。
だからそれだけ感情が爆発したんだろう。
けれど、彼は明らかに変わっている。
何かが吹っ切れたんだろう。
するとアルフレッドは窓の外から目線をはずし、こちらを向いて言った。
「今日、酒でも飲みに行かないかい?」
「おっさんか…自棄酒?お前はまだ未成年者。」
「……仕方ないなぁ…じゃあオレンジジュースで我慢するんだぞ!」
「そか、じゃあ行くか!」
俺も心残りはある。
でも二人が幸せならそれで良いんじゃないか、そう思った。
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